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二次創作小説やWeb小説などを取り扱っています。

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レイス 救いのない逃避

【殺人鬼の恋】序章 鮮血のきっかけ

フィリップは着の身着のままその街へやってきた。彼には金も住む場所もなかったが、新生活に対する希望だけがその胸にあった。フィリップは栄えた町並を見渡す。舗装された広い道路にそびえ立つ建築物。観光客向けに展開された店はアンティークにアレンジさ…

【殺人鬼の恋】第1章 悲劇の幕開け

気づいた時には濃霧が周囲を埋め尽くす不気味な廃墟に迷い込んで居た。所々に車のスクラップが廃棄され、鉄クズや不法投棄のゴミが無造作に放棄されていた。人々から忘れ去られた空間、いやむしろ人々が目を背けるほどに忌々しい場所。その廃墟はそう思わせ…

【殺人鬼の恋】第2章 帰りたくない

かくして女は異形の男と共に行動することとなった。女が迷い込んだ廃車工場の跡地は周囲がコンクリートの壁で覆われており、2つの鉄の扉を開ける以外の方法がなかった。幸いレイスが脱出する方法を知っていた。工場内の発電機を起動することでドアが開くよ…

【殺人鬼の恋】第3話 思うようにならない

その女は、物心ついたときから感情という感情を感じたことがなかった。自分の人生は親によって整理され、用意されたレールの上を歩くだけの選択肢しかなかった。ゆえに感情などは不要だった。女は感情を封じたまま感情豊かに振る舞った。

【殺人鬼の恋】第4話 何かがいる

それから数日が経ち、女は非日常から日常へと戻っていった。森の中で出会った異形の怪物との記憶は女の中の思い出の1つとして大事に仕舞われた。 女には結婚の日が迫ってきていた。次第に厳しくなる制限、周囲の目が女の自由や思い出を少しずつ束縛していっ…

【殺人鬼の恋】第5話 嫌な気配

フィリップは新しく訪れた街で、幸いにも廃車工場の解体仕事にありついた。上司はアズローブと名乗った。がたいの良いたくましい男であったが品はなく顎周りを黒く覆う濃い髭面はいかにも悪人風だった。

【殺人鬼の恋】第6話 いびつな駆け出し

フィリップが廃車工場で働き始めてから既に数ヶ月が過ぎた。廃車工場には時折、ガラの悪い人間が立ち入りフィリップの上司と何らかの話をして帰って行った。フィリップ同様、廃車工場では多数の若者が働いていたが彼らは何も知らされておらずただ淡々と業務…

【殺人鬼の恋】第7話 祭りの夜

レイスが女に愛の言葉を継げたその夜、二人は一旦別れ、後日合流することにした。年に一度の派手な祭りが街で行われるからだ。その祭りでは多くの露天が開かれ花火が上がる。そして参加者は奇抜なファッションや異形の仮装に身を包み町全体が異様な空気で包…

【殺人鬼の恋】第8話 誘拐

レイスはいつも通り公衆電話から電話をかけていた。この瞬間のためになけなしの金を全てはたいた。日々貯めてきた小銭を全て水に捨てた。無駄だとわかっていても彼女に電話をかけたかった。 いつも通りの着信音。彼女が取らないことはわかっていたがそれが日…

【殺人鬼の恋】第9話 帯ほどき

レイスは女が用意した車に女と女の荷物を押し込んだ。女の車はワゴンタイプの大きめの車だった。レイスは運転席に乗り込むと器用な手付きでハンドルを回し、発進した。前職の経験から運転自体は慣れていた。同時に嫌な記憶も蘇るが今は我慢だ。 レイスは車を…

【殺人鬼の恋】第10話 獣の咆哮

シャワーを浴びたレイスは服も着ずにシーツにくるまりベッドでさめざめと泣いた。「ううなんてこと…もうお嫁にいけない…」 あの後、レイスは女にくまなく体を洗われた。目をつぶってはいたが女の柔らかな体が自身の体をなでる感触がまだ残っている。「その状…

【殺人鬼の恋】第11話 思い出したくない記憶

フィリップの平穏は一瞬にして終わった。灰色の雲が空を覆う曇天の中、フィリップは廃車のトランクから血が滴り落ちているのを見つけた。 トランクの中に人が押し込められている。フィリップは一瞬、体が凍りついた。このまま自分が廃車を粉砕機にかけていた…

【殺人鬼の恋】第12話 歪んだ日常

朝が訪れた。だが日が昇ることはなかった。この空間はいつもそうだ。時が止まり朝と夜の区別がない。だから自分でその感覚を調整するしかない。言ってしまえばここに住まう生物にもそれは適用されるので睡眠も食事も最悪必要がないのだ。 ただ人が人として最…

【殺人鬼の恋】最終話 救いの無い逃避

女がレイスと駆け落ちしてからすでに半年が過ぎていた。女は窓の外を眺めながら自分の腹部をさすった。あれから何度もレイスに抱かれた。毎晩のように抱かれたが子供ができる気配はなかった。 現実を思い知らされる。死者と生者の間に子供ができるはずがない…