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【殺人鬼との恋】第1話 殺戮の幕開け

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 男が支配しているこの土地は、かつて鉄鉱と鋳造によって栄えた名誉ある場所だった。だがそれははるか昔の話。今は血の匂いが充満し闇が支配する忌々しい土地となっている。黒き木々はその土地を覆い隠し、一寸の光もなく不気味な霧だけが広がるこの地に入りたがるものなどいない。いるとすればそれはよほどの愚か者か、悪事の極みを尽くす極悪人だろう。滅多に人が立ち入ることのないその地に侵入者が現れた。数は4人といったところだろうか。湿度を含んだ草が生きた人間に絡む気配を感じ取った。

  生きた人間の気配というのは隠そうとしても滲み出るものだ。生者の呼吸が空気を汚し、その臭いが空間に染み渡る。そうやって虚無の空間は汚染されて行く。男は傍に置いてある不気味な笑みを浮かべたホッケーマスク型の仮面を被り、自室の壁に立てかけていた巨大な肉包丁を手にした。

 女は後手に縛られ口に布を噛ませられて、車の後部座席に放り込まれた。狭い車内の中に男たちが乱暴に乗り込み笑いながら車を発車させた。男たちの身なりは地味だがどこか垢抜けていた。顔立ちは若く、少年期を終えたばかりのあどけなさが残っている。女を拉致した若い男たちは一見して普遍的だった。派手とは言いがたい地味な服装を装い、顔には穏やかな笑みを浮かべ、善良な市民を装いながら平気で非道の限りを尽くしていたのだった。犯罪は手慣れているのだろう。一見して普通でしかない男たちは一般市民の皮を被った犯罪者集団だったのだ。女を詰め込んだ車は迷いなく人気のない道を通り山道へと向かっていた。後部座席の男が顔をいびつに歪ませ、狂笑しながら女の被服に手をかけた。詰め込まれた女は一瞬、目を見開くと激しく暴れた。

「おいおい、あまりやりすぎるなよ。着いてからが楽しみなんだからな」

 ブラウスが引き裂かれ、女の肌があらわになったところでもう一人の男が笑いながら言った。なぜこんなことになったのだろう。女は自問する。日常と変わりない平穏な日だった。いつも通り会社に行き、業務をこなし、帰路につく。ただ、それだけのことだった。業務終了後、帰路で馴染みのマーケットに行き、軽く買い物をした際、見知らぬ男たちに拘束され車に放り込まれた。一瞬の出来事だった。まさか自分が狙われるとは思っていなかった。しかも相手は自分よりも年下の少年たちだ。複数の集団による少年犯罪が多発しているとは聞いていたが、少年よりも一回り程度年齢を上回る自分が狙われるとは全く考えていなかった。その動機は簡単だった。若い娘を拉致するのはリスクが高いが、成熟した大人であれば自己責任で済むからだ。組織に属していれば世間からの好奇の視線は恐怖でしかなかった。社会は残酷だ。被害者でも加害者でも事件に関わった瞬間から積み上げたキャリアを失い出世を絶たれる。だから被害にあっても泣き寝入りしてしまうことが多い。彼らは犯罪に関して卓越していた。被害者の心理や、被害者が失うものの大きさすら予想して犯罪を実行していた。山へキャンプに行くような感覚で楽しげに笑う少年たち。女にとってその先は地獄でしかなかった。しかし残酷なことに、ほどなくして車は森の奥深くに辿り着いた。

「この場所最近発見したんだ。いつものところは目をつけられてるからな」

 男の一人が言った。その場所は森に囲まれ、漆黒の暗闇に包まれていた。濃厚な霧が密度をまして体に張り付いた。森の中央には木造の建築物があり、作りはしっかりしていたが外装が朽ちて天井部分が大きくくりぬかれていた。周辺にはレンガとコンクリート、そして鬱蒼とした木々に覆われそれらはまるで人に見られてはいけない何かを隠しているようだった。男たちは手慣れた手口で森の中央部にある屋敷へと女を運んだ。
女の拘束を解いた後、男たちは下賤な笑いをあげながら女を囲み、高い視点から女を見下した。女は嫌悪感と憎悪で声にならない悲鳴をあげた。男の一人が女の上に覆いかぶさり女の体を押さえつけた。服は破け上半身があらわになる。女は苦悶の表情に顔を歪ませる。

 その瞬間だった。覆いかぶさった男の体が何者かによって弾かれた。同時に男の首が跳ねてあらぬ方向を見上げながら、ずるりと倒れ女の目の前に落ちた。一瞬の出来事に女は硬直する。叫び声すら出ない。それは男たちも同じだった。犯罪者たちの身長よりもさらに巨大な大男が、女を囲む男たちを見下げていたのだった。