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【殺人鬼との恋】第4話 漆黒のドレス

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 殺人鬼によって生きることを許された女は、森の中で束の間の自由時間を許された。といっても限られた廃墟の中ではとくにすることもなく、いつもであれば素通りしてしまう森の中を軽く散策するくらいしかやることがなかった。女は黒いドレスを身に纏い、髪型を整え、久々の自由時間を楽しんだ。ドレスのデザインはシンプルでシックなものだった。輝くような滑らかな生地が使用され、スカートの丈は膝下程度まであった。風になびくと穏やかにゆれ、先端のレースがひらりと舞い気品に満ちた美しさを持っていた。それはすべて殺人鬼の趣味だ。殺人鬼が選び女のために購入したドレスを女は着ていた。血によって穢れた殺人者から与えられた贈り物。それは美しいがひどく不気味で吐き気を起こす錯覚にとらわれた。

 女を生かすと口にした殺人鬼。その宣言から程なくして、殺人鬼は女に新しい服を幾つか買い与えた。女に身奇麗な服を着せ、食事を与え、人としての生活を提供した。一つ一つが上質で、一般階層の人間では得られないようなものがほとんどだった。殺人鬼は一見して屈強で粗暴であったが、立ち振る舞いや動作は上品で知性があった。食事の作法、新聞を眺める動作、殺人鬼が所有する高度な知識が秘められた多数の書物、彼自身が持つ育ちの良さが彼の生活から伺えた。殺人鬼がどのようにして資材を調達しているのか女にはわからなかった。だが殺人鬼には莫大な財産があることは確かであった。

 女は黒いドレスをなびかせながら、殺人鬼の住む土地を歩く。そしてその様子を、殺人鬼は屋敷の窓から冷たく見下ろしていた。女を生かし奴隷にしたのは気まぐれだった。元々奴隷は欲しかった。いなくてもいいが、いれば捗る。不必要だが不可欠なもの。問題は奴隷の資質だ。殺人鬼が求めた資質、まずは優秀な者、そして自分に対して素直で従順であること。4人の侵入者を発見してから、まず醜悪な精神の者は真っ先に始末した。女を欲望のままに犯す人間など不愉快以上の何者でもなかった。次に愚かな者は奴隷候補から外した。無防備に逃げ惑い、罠にかかる莫迦はその場で殺した。3人目の獲物は頭はよかったが、その場しのぎの取り繕いと反抗的な精神が気に食わなかった。結果的に余ったのがこの女だ。女が最後まで生き残った瞬間から女を奴隷として生かすことは心に決めていた。謙虚な態度と素直な性格も悪くなかった。完治しない足で自分の後を一生懸命についていく姿は健気で愛着がわいた。

 従順で穏やかで健気に自分についてくる奴隷。殺人鬼が殺してきた中でも、今までにない侵入者だった。賢く従順な奴隷は犬や猫のような可愛らしさがある。見ているだけで飽きないし、孤独な彼の生活に花のような色合いをもたらした。思慮を廻らせつつしばし森の中で遊ぶ女を見つめていると、女が何もない場所で躓き、思わず転びそうになっていた。女は慌てて体制を立て直すと、殺人鬼がいる建物を見上げた。恥じらいを浮かべ殺人鬼の目を確認していた。殺人鬼は思わず笑う。不気味な笑みの仮面の奥には穏やかな表情が生まれていた。