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【殺人鬼と三角関係】 第27話 都合の良い女

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一夜が終わり、朝を迎えた。実典はいつものようにベッドで目が覚める。静かだった。朝を迎えれば数日前の殺し合いが夢だと思えたが現実はそうは行かなかった。部屋を出てリビングにつくとケヴィンがいたからだ。鋭く冷たい視線は変えないまま、背中には怒りと憎悪が満ちていた。睨むように実典を一瞥する。おはようのあいさつも無い。

 「お、おはよう」

「……」

ケヴィンは無言だった。数日前からずっとこの調子だ。実典は目線を逸らしたまま朝食の準備を始めた。こんなときにウィリアムがいてくれれば良いのに。運が悪いことにウィリアムは天国に招集をかけられ不在だった。しかも一週間もだ。エドワードにいたっては出張だ。この最悪に機嫌の悪いケヴィンと二人きりで生活しなければならない。胸焼けしそうだ。

実典は炊飯したご飯をよそい、おかずと共にテーブルに並べた。そしてケヴィンの斜め前に座り鉛のような飯を食べた。その間、会話は無かった。

「け、ケヴィン。この前はごめんね」

「何が?」

無愛想な返事。それがいちいち胸に刺さる。

「私、ケヴィンのことが嫌いじゃないよ?」

「だから何?」

実典は黙り込んだ。どうすれば許してもらえるのだろうか。必死で考えた。

「け、ケヴィン。そうだ肩揉もうか。疲れてるでしょ?あ、傷の手当するよ」

「……」

不思議なことにケヴィンは普通に受け入れた。ケヴィンの服を脱がせて傷の治療をする。丁寧に、優しく。

「ほ、ほらケヴィン。もう大丈夫だよ」

ケヴィンの体を猫の毛を撫でる要領で撫でた。ケヴィンは何も言わない。

「ほ、ほらケヴィン、寝癖ついてるよ、セットしてあげるね」

実典は手にワックスをつけてケヴィンの髪をセットアップした。首元まである癖下を後ろに流しオールバックにする。なぜか紳士かサラリーマンのような格好になった。

「に、似合ってるよ」

「……」

ケヴィンは何も言わない。無言で実典を睨みつけている。

もう嫌だ。逃げ出したい。実典は泣きそうになった。

「そうだ、ケヴィン。イケメンになったことだしデートしようか。デートしたいでしょ?ねっ」

こんな密室でケヴィンと二人きりでいるのは嫌だった。しかもこのケヴィン、リビングから一切退こうとしない。自分が外出したらケヴィンを嫌っているように捕らえられてしまう。実典はどうでも良いことばかり気にしてしまうようになっていた。

「……いいよ」

間を空けてケヴィンは返事をした。実典は思わず振り向く。

「デートしようか」

ケヴィンは笑った。その笑みには悪意が潜んでいた。それでも実典は嬉しかった。二人は身支度を整えると家を出た。

 

 

ケヴィンと実典は電車で都会に出た。騒々しく人が闊歩し交差する。通行人は一様に実典とケヴィンを見た。美しいモデルのような外人男性。実典が髪をセットしたせいで魅力に拍車がかかっていた。

実典はすこし引き気味に先導するケヴィンについていった。その力関係は第三者から見ても歴然としていた。

「け、ケヴィン。どこにいきたい?」

引き攣った声で実典は言う。ケヴィンと二人きりにならないですむならどこでも良かった。漫画喫茶とかカラオケとかそう言う場所は絶対嫌だ。そうだ、映画館。あそこなら何も会話しなくて済む。

「俺が決めるから黙って着いてこいよ」

ケヴィンは細めた目で冷たく実典を見下し言った。実典は無言で俯きながらケヴィンの背中を追いかけた。

道は奥まって行き、人気をなくす。うねるような路地裏を通り、影に隠れたその場所でケヴィンは止まった。実典は顔を上げてそれを見る。そしてその体が硬直した。

「え」

言葉が詰まった。胸がかき乱される。この場所は。

「ほらついたよ、行こう」

ケヴィンは実典の手を取ってその建物へ入っていく。暗がりの中、少しだけ派手な装飾を取り入れた外装。

「ちょっと、待ってよ!ここって、ら、ら」

言えない。その先が言えない。

「そうだよ、ラブホテルだよ」

だからケヴィンが代わりに言った。

「いやいや!やだよ!無理だよ!入らないから!」

ケヴィンは実典に接近し、真上から見下した。その位置から見下されると実典が怯むことを知っていた。

「入らないならいいよ」

「えっ」

「それって僕のことを信用してないってことでしょ?わかったよ」

「~~~っ」

実典は唇を噛み締めた。どうする、どうすれば良い。デートに応じたと思ったらラブホテルに入ろうという。この不気味で派手な建物に一度入ったら逃げ場は無くなってしまう。だが拒絶したらケヴィンは一生、実典を許さない。こいつは粘着質だ。一度怒らせたら本当に怖い。

「どうするの?」

ケヴィンは問う。

「いや、でも、妊娠とかしたら」

ケヴィンは目を細めた。

「だから最後まではしない」

「……」

そういわれてしまえば返す言葉がない。実典は考えた。ケヴィンとこのままなし崩し的にホテルに入ったとして二人の関係は改善するだろうか。実典が正式にケヴィンを選んで交際して、それで結ばれるべきだと思った。流されるがままに曖昧な関係を持つのは不純だ。だがケヴィンは怒っている。その選択が是か非か分からなかった。実典は考える。私はどうするべきだろうか。私は……

 

A:ケヴィンと正式に交際してからホテルに入るべきだ。

B:ともかく今はケヴィンの望みを叶えてやるべきだ。

 

実典は葛藤していたが口を開く。実典は唇を噛んだまま頷いた。

「わかった」

ケヴィンは踵を返し、実典に背を向ける。

何かあったらこれを使えば良い。実典は中指に嵌めた銀の指輪を撫でた。

「あ、忘れてたけど」

ケヴィンは自動ドアの前で立ち止まり実典に語りかけた。

「それ、外してくれる?」

「えっ」

実典の顔が絶望に染まる。

「危ないから」

「……」

実典は困惑した。この指輪を外してしまったら本当に逃げ場を失ってしまう。

「僕のことを信じてるんでしょ?」

冷たく言うケヴィン。もはや従うしかなかった。ケヴィンを更生させること。人としての生活が送れるように道を作ること。それが実典の使命だったから。

「分かったわ」

実典は指輪を外すと丁寧な動作でかばんから財布を取り出し、その中に仕舞いこんだ。

そして先導するケヴィンの後をついて行った。

 

 

ケヴィンは部屋を選ぶと自分の財布から金を出して支払った。そして鍵を受け取るとエレベーターを上がり部屋に直行した。

「お金持ってたんだね」

「そりゃちょっとは」

ケヴィンは答える。久々に悪意のない返答に実典は微笑んだ。

ケヴィンは目的の部屋にたどり着くと鍵を開けて部屋に入った。実典は立ち止まった。この部屋に入ったら本気で逃げられない。汗が頬を伝う。

「ほら、実典」

ケヴィンに名前を呼ばれたのは久しぶりのことだった。実典は意を決して部屋に入った。

廊下を通るといつも使っているベッドよりもはるかにおおきいダブルサイズのベッドが設置されていた。そう、ここはそう言う場所なのだ。ケヴィンは傍らに置かれたテーブルに鍵を置くと椅子に座った。

「さてと……」

頬杖をついて思慮にふける。何を考えているのかは読めなかった。

「どうしてもらおうかな」

独り言のように言った。実典はただ呆然と立ち尽くすことしかできなかった。

「……実典、裸になってよ」

「……く」

思わず言葉を飲み込んだ。この美しい男性の前で自分の醜い体を晒すなんて屈辱だった。いつも迫ってくるケヴィンを避けようとしていたのもそのせいだ。

「できない?」

ケヴィンは失望するように言った。試されているのだと実典は察した。

「いいわ」

実典は自分のワンピースに手をかけた。ファスナーをおろしするすると着衣を脱いでいく。そうだ、醜い体を晒して失望させればいいのだ。実典の体をその目で見れば実典に欲情することもなくなるだろう。ケヴィンは美しいのだから。

実典は下着だけの姿になった。そしてケヴィンをちらりと見る。

「全部脱げよ」

実典の期待は簡単に裏切られた。屈辱的な思いで下着を脱いだ。ケヴィンの方を向かなければ。だができない。裸を見られるなんてそうそうあることではない。恥ずかしかった。

「こっち向けよ」

ケヴィンに指示される。実典は苦虫を潰すような嫌悪感で恐る恐るケヴィンに向き合った。ケヴィンは上から下まで舐めるような目で実典を見た。頭から足の指先までじっくりと。もう嫌だ。これなら普通にやったほうがどんなに良いか。実典は涙で潤む。

「綺麗だよ、実典」

ケヴィンは唇を歪ませて笑った。そして椅子から立ち上がりベッドに腰掛けた。

「実典。こっちにおいで」

手を差し出して実典を呼ぶ。実典はただ従うことしかできなかった。歩いてベッドに移動しケヴィンの隣に座る。ケヴィンは実典の肩に手を回しそのままベッドに寝かせた。

その手がゆっくりと頬を撫で、胸を撫でる。今まで服越しにセクハラされていたが、今は直に手が肌に触れた。

「け……ケヴィン」

実典はそこで口を開いた。行為が始まる前に確認しなければいけない。

「何?」

「言うことを聞いたら……許してくれる?」

ケヴィンは何も言わず実典を見ていたが程なくして口を歪ませて笑った。

「ああ」

そして息がかかるほど実典に顔を近づける。

「僕のいうことを聞いたら、許してあげるよ」

蟲惑するような妖艶な声だった。そしてそのまま実典の首筋を吸った。赤い痕を付けていく。わざと見えるような位置だった。

実典の心は恐怖によって鷲づかみにされていた。身動きがとれなかった。そもそもこういう行為は得意ではなかった。他者とのコミュニケーション。体を使ったやり取り。最も苦手なことを強いられているのだから。

ケヴィンが実典に覆いかぶさり、上着を脱いだ。ケヴィンの白い肌が晒される。この男の裸を見るのは三度目だ。改めてみるケヴィンの姿は美しかった。この男の手に抱かれたいと思う女はいくらでもいるだろう。だから自分も嬉しいと思うべきだ。実典は自分に言い聞かせた。

ケヴィンは実典の胸に舌を這わせた。奇妙な感覚が実典の中で疼く。

「……っ」

ケヴィンの手が太ももをさすり、そのまま足の間へと移動した。実典の目が見開く。その先は嫌だ。体が硬直したがケヴィンはかまわなかった。

「実典、足開いて」

「さ、最後まではしないんだよね」

実典は気を動転させていた。声は震えて引き攣っている。

「ああ、しないよ」

ケヴィンは笑って言った。実典は従い、少しだけ隙間を開けた。その中にケヴィンの大きな手が入ってくる。

ケヴィンはしばし楽しんだあと、実典に口付けをした。舌を入れ、唾液を無理やり送り込む。そしてあらかた口内を犯すと唇を離した。

「実典はこういうの嫌いなんだっけ」

「え……」

ケヴィンは嘲笑うように実典を見ている。

「……」

蛇に睨まれた蛙の気分だ。実典は自分の意思に反することを口にした。

「好きです」

再びケヴィンの唇が迫った。必死に舌を出して応えた。いつまで続くのだろうか。時計をちらりと見たがその進みは恐ろしいほどに遅かった。

「ふふ、可愛いよ。実典」

ケヴィンはいたずらっぽく笑った。実典は泣きそうになった。もう嫌だ、と思った。

ケヴィンの股間は膨張していた。頭の中は実典と交わることで一杯だったがここで実典を犯す気はなかった。

(さすがにそう簡単に犯しちゃおもしろくねえよなぁ)

裸になった実典を下にケヴィンは考えた。それだけではない。妊娠のリスクもある。一応、避妊策もあるが絶対じゃない。たしかに妊娠させて自分だけのものにする方法もないわけではないが、現段階では得策ではないだろう。おそらくそうしたときウィリアムやエドワードに殺される。

ケヴィンは実典の上から退くと実典を一瞥した。

「実典、考えてよ」

「え……」

実典は起き上がり、シーツで体を隠した。その姿にはそそるものがあった。

「僕がどうしたら喜ぶのか、考えてよ」

「……」

実典は無表情でケヴィンの目を見、そして股間を見た。その応えは考えなくても分かった。

「……」

一瞬頭が現実逃避した。考えたくなかったからだ。そんな行為はしたことが無かった。できるかどうかもわからない。いや、できるだろうが人として大事なものを失う気がする。

「早くしろよ」

そう命じられてはっとした。ケヴィンが自分を睨んでいる。実典は嫌悪感を噛み潰した。そしてケヴィンの足の上に跨り、膨張したそれを見つめる。

「それをしたら許してあげるよ」

やるしかなかった。実典はケヴィンのズボンを緩めた。膨張したそれが現れる。当たり前かもしれないが普通のそれと比べて異様に大きかった。それが自分の中に入ってくることを想像した。願わくば最後までいかなければいい。相当痛そうだったから。

実典は唇をそれに近づけ、舌で先端を舐めた。ゆっくりと不器用に慣れない手つきでさすりながら必死に舐めた。

ケヴィンは目を細める。そして実典の髪を撫でた。実典はケヴィンを上目遣いで見た。

「可愛いよ。実典」

思わず顔が真っ赤になった。とにかく早く終わらせたい。実典は先端をくわえた。

 

 

「げほっ、げほ」

実典は口から白い体液をこぼし咳き込んだ。本来ならば飲み込むべきなのだろうが、無理だった。気持ち悪い。吐きたい。そしてそのままケヴィンの横に倒れこんだ。ベッドに横たわっていると疲れのせいか睡魔が襲ってきた。このまま眠ってしまえば危険だ。分かってはいたが眠気には抗えなかった。

ケヴィンは眠りに落ちていく実典を黙ってみていた。そして実典の頭に腕を回し自分の体に密着させた。胸元までシーツをかぶせる。

ズボンからスマートフォンを取り出す。カメラを起動させ眠った実典の姿を写真に収めた。

自分の腕に抱かれて眠る裸の実典。その写真を見つめケヴィンは歪に笑った。

「エドワードの奴、なんて言うかな」

その笑みには悪意が込められている。そしてもう一度実典を見た。

美しい、と思った。この女は何か勘違いをしているが、人の美醜は人間が思う以上に感情に流されている。美しいから好きなのではない。他者に対する印象や好意がその人間を美しく見せている。それだけだ。

ケヴィンは実典の頬を撫でた。この女を汚してやりたい。自分の精液を流し込んで妊娠させてやりたい。胸の奥でどす黒い欲望がわきあがった。だが理性でそれを押さえつける。それはまだ先だ。今じゃない。邪魔者を消し去ってからだ。

「後でいくらでも犯してやるよ、実典。ふふっ楽しみだなあ」

ケヴィンは久々に純粋な笑顔を見せた。悪意には満ちていたが。

 

 

時刻は夕刻を過ぎた。二人はホテルを出て無言で帰路についた。明日になればウィリアムもエドワードも帰ってくる。またいつもの生活が始まる。実典が憔悴していると、ケヴィンが実典を見下していた。笑みをたたえて実典を見ていた。

完全に変わってしまった力関係。実典にはどうすることもできなかった。頭の中で今日の出来事が再生される。決して超えてはいけない一線。交わっていないのは分かった。陰部に痛みや違和感が無いからだ。だが厄介だった。その分だけケヴィンは優位な立場だった。実典はケヴィンに「許してもらい」、「見逃してもらった」のだ。

 

この先どうすれば良いのだろうか。この記憶を忘れることができるのだろうか。今後ケヴィンとどう接していけばいいのだろうか。願わくばエドワードが自分のことを好きでなければいい。そうしたら状況はこれ以上複雑にならずにすむ。とにかく穏やかな日常を願った。