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【殺人鬼との恋】第7話 禁忌の決断

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 女が下した決断は、人としての秩序を捨てて殺人鬼と生きることだった。もはや悪魔でも構わなかった。例え人殺しでも戦争で数百人を殺すことと何が違うのだろう。許される殺人と許されない殺人。罪を決めるのは所詮人だ。であるならば、殺人鬼も人も変わらない。人である限り、罪からは逃れられない。女は自身の悩みにそう結論付けると、今後の方針に決定を下した。殺人鬼に愛されない未来など考えられなかった。答えのないまま殺人鬼との暮らしを続けるのは耐えられなかった。拒絶でも肯定でもどちらでもいい。答えが欲しかったのだ。

 その結果、殺人鬼を激怒させ拒絶された。殺人鬼の家から追い出されはしなかったが女の行く末がどうなるかわからなかった。このまま殺人鬼に愛されないまま奴隷生活が続くのか、それとも殺されるのか。

 女は膝を抱えうずくまった。血と鉄の匂いが充満する地下室は頭を冷やすのに丁度良かった。今はもう、誰ともかかわりたくない。女は目を閉じ、とにかく現実逃避に集中した。殺人鬼が迎えにきて優しく自分を抱きしめる。柔らかに唇を重ね彼の胸に抱かれる。女はそこまで夢想して首を振った。止めよう。虚しくなるだけだ。

 そんなときに限って、人の気配が近づいてきた。

男によるものと思われる重厚な足音がこだまする。
巨大は体躯を持つその男は、静かに女の名を呼んだ。

「話がある」

怒りも喜びもない、極めて冷徹な目が女の視線を捉えていた。女の感情は、恐怖と不安で満たされた。そのまま立ち上がり徒歩で殺人鬼の後をついていく。殺人鬼は女の歩調に合わせてゆっくりと歩いた。

 地下室の階段を上がり食卓についた。殺人鬼と向かい合う格好で席に着く。テーブルには沈黙が降りていた。しばし互いに無言であったが静寂を破るように、殺人鬼は口を開いた。

「なぜあんなことをした?」

 あんなこと。女は自身の行動を振り返る。男に寄り添ったそのとき、その太ももに指を這わせ淫らに撫でた。それは子供の遊びではなく、確実に男女の垣根を越えようとする行動だった。女は言葉を紡ごうしたが、声が出なかった。貴方のことが好き。それだけのことが言えない。答えが欲しいと思いながら、実際のところ自分の願望に対する拒絶が怖かったのだ。

「もう嫌なんです。いっそのこと殺してください……」

 か細い声で懇願した。もうこれ以上、何もないまま暮らしていくのは無理だ。

「巫山戯るな。俺にそんなことをさせる気か?」

 殺人鬼は女の提案を強く一蹴した。お前は殺す価値もないと言われた気分だ。愛せない、殺せない。だが先のことは決めなければいけない。今後のことを。やはり言わなければ、自分の気持ちを。女は決める。

「わ、私は……あなたのことを…」

「言うな」

 一蹴する。引きつった女の告白を男の声が止める。その静止は女の心をますます傷つけた。殺人鬼は立ち上がり、女に背を向ける。

「今夜決める。考える時間を寄越せ」

 殺人鬼はそのまま部屋から立ち去った。女の困惑した目が男を見送った。

(どうせ断られる)

女は思った。一人取り残された一室で、女は今後の未来を想像した。