HeavyNovel |二次創作小説・Web小説サイト

二次創作小説やWeb小説などを取り扱っています。

二次創作小説やWeb小説などを取り扱っています。

【殺人鬼との恋】第8話 邪悪な欲望

f:id:tableturning:20161029105804j:plain

 殺人鬼は森の中でたたずみ、一人立ち尽くしていた。奴隷として監禁し奇妙な関係を持った女の存在。自身の隣にあの女がいるということは殺人鬼の精神に良くない影響を及ぼしていた。想定外の事態だった。

  女の媚薬のような視線が殺人鬼を捉え、這うような指先の感触がいまだに殺人鬼の太ももに残っている。
(あの女は俺を主従としてではなく男として見ていた)
 その感触は麻薬のような毒となって殺人鬼の全身に廻った。その事実は殺人鬼とって蠱惑するように精神を蝕んでいた。自身の肩に突き刺さるフックの痛みとは違う。痛みによる強暴性は殺人鬼の持つ鉄の意思で押さえつけられるが、この精神侵食は別だ。押さえつけようとすればするほど、暴力的な支配衝動は増し殺人鬼の精神を蝕んだ。
(あの女を犯したい)
 何度も願望が生まれては、それを押し込めた。愛してはならない。当たり前だ。悪魔と人の間に愛情など成立しない。そうしないで済むのなら、それが一番なのだ。奴隷と支配者、それだけの関係性でよかった。

 だがそれを打ち破ってきたのだ。あの女が。殺人鬼の中に凶々しい欲望が広がる。
(あの女を犯したい)
 殺人鬼は苛立たしげにコンクリートの壁を肉包丁で叩きつけた。がきん、と甲高い音がなった。音ともに、邪悪な思念が一瞬クリアになる。そして再び女の姿が頭に浮かぶ。それは初めて出会った時の女の姿。肌蹴た服装で白い素肌を晒し、熱を持った視線で己を見上げている。殺人鬼は首を振って妄想を払いのけた。こんな感情を持ったことなどなかった。女などいくらでも選べたし、手に入った。自身が行動しなくても巨大な財産を目当てに向こうから寄ってきたのだ。殺人鬼はそれを受け入れるだけでよかった。だが、今は違う。あの女の眼差しは自身の肉体に向けられ、自分自身を欲している。財産を渡せば納得するような性格でもない。
 必要なのは決断だ。今後、どうするか。それを決めなければいけない。今までと同様にその場限りで終わらせるものではない。その場しのぎの決断ができなければどうするか?あの女を逃がし、関係性に終止符を打つか。問題は自分がそれをできるかどうかだ。
 殺人鬼は包丁を下ろし、静寂に身を任せた。答えなど最初から決まっていたのだ。