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【殺人鬼との恋】第9話 邪悪な笑み

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寝食を分けられ別室に放り込まれた女は、質素かつ粗野な寝台で眠っていた。ベッドはキングサイズで女一人で寝るには落ち着かない作りだった。いつもは隣に殺人鬼がいた。だが今は一人だ。そう、ずっとベッドを共にしてきたのに殺人鬼は一度も女を抱こうとはしなかった。女の閉じた瞳から一筋の涙が枕に落ちた。

部屋の戸が開き黒く巨大な影が光の隙間から現れる。足音を隠すことすらせずゆっくりと重い足取りで女に歩み寄った。深い眠りを妨げられ女は目を覚ました。女のすぐ隣で、殺人鬼が立ち自分を見下げていたからだ。殺人鬼は異様な存在感を持っていた。そして悪意に満ちた瞳で女を睨みつけていた。

 

「エヴァン?どうかしたの?」

 女は震える声で問う。殺人鬼は女が目を覚ましたのを確認すると、女から少し離れ、顔を覆っていたマスクを取りチェストの上に置いた。

「どうもしていない。いつも通りだ」

 そう語る殺人鬼の背中。いつも通りだと語るそれはどう見てもいつも通りではなかった。男の目には悪意が満ち、なんらかの感情が宿っていた。普段の姿とは明らかに違う殺人鬼の姿があった。殺人鬼はマスクの下の顔を露わにし女に近寄った。深く険しいその表情からは感情は読めなかった。だが何を始めようとしているのかは容易に想像できた。殺人鬼は女の足先から胸元、そして顔を眺めた。女の心臓が高鳴る。得体の知れない恐怖と未知の感覚に体が強張った。

「何を怯えている?」

一般的な恐怖とは形容しがたいものが場を侵食していた。その場を支配するのは凶々しい悪意と支配欲。女の顔に悪意への怯えと不安が浮かんだ。頭の中にあるのは混乱だった。
 当たり前だ。好きか嫌いかの答えを求めればそうなる。早くとも遅くとも、いつかはこういう時が来る。双方、中学生のような先見の甘い子供ではない。だが覚悟が定まってなかった。あまりにも急すぎる。もう少し過程を得て少しずつ慣らしていくものだ。さらに相手は普通の男ではなく異形の殺人鬼だ。その行為の結果、自分がどうなるか予想もつかなかった。

 思考を逡巡させていると、殺人鬼はベットに腰掛け女に向き合った。

「綺麗な髪だな」

殺人鬼は女の髪に手を伸ばし自身の指に絡める。普段なら絶対にあり得ない殺人鬼の言葉。言葉は甘やかだが男の目は獲物を狩る瞬間と同じだった。赤みの残る殺人鬼の指が女の髪に絡みつく。血と泥は洗い流され、殺人鬼本来の肌の色が晒されていた。指先は虫のように這い頬を撫でた。その指はゆっくりと女の胸元に近づいて行き浅く先端を撫でた。皮膚の硬い感触が頬から伝わった。胸元を撫でられた瞬間、体が震えた。身動きができなかった。女は逃げ道を絶たれていた。殺人鬼がベットに腰掛けた時点で逃げるチャンスを失ってはいたが、今の殺人鬼には言葉にできない恐ろしさがあった。気配もなく歩み寄り、自身の存在感だけで他者を強張らせる。普段は殺さなくても、今抵抗すれば殺されてしまう気がした。そう、女を見る殺人鬼は人を殺す時と同じ目をしていたのだ。

 蛇のような目が女を捉え、接近する。女の唇が殺人鬼の唇によって塞がれた。閉じた唇を殺人鬼が軽く噛み、無理やり開かせる。開いた隙間から舌をねじ込んで女の舌を絡めとった。男の舌と唾液が女の口内を侵食した。そしてそのままの状態で女を押し倒した。唇はさらに殺人鬼によって圧迫され乱暴に犯されていく。唾液が流し込まれ否応無く喉の奥を通る。両腕は殺人鬼によって拘束され逃げる隙を与えない。

 これが殺人鬼の下した決断だった。決断に責任が伴うのであれば、力づくで自分のものにして仕舞えばいい。自ら死を選ぶのは大罪だが、他者による不可抗力による殺害なら殺された本人に責任はない。故に、殺人鬼はその決断を下した。女が殺人鬼を愛しそれに殺人鬼が答えれば女は罪であるが殺人鬼が女を征服し有無を言わせず支配すれば女は被害者でしかない。それが本音か殺人鬼の欲望が生んだ建前であったかは本人にもわからなかった。だが今はひたすらこの女を犯したい。

 殺人鬼は女をベットに押さえつけ両腕を己の手ひとつで拘束し自由を奪った。もう片方の手で女の寝間着を乱暴に破き素肌が露わにする。乱れた女の裸はひどく官能的だった。脳が震え、興奮が殺人鬼を突き動かす。異形の殺人鬼はそのまま晒された女の胸元に舌を這わせ先端を転がした。

「……っ」

互いの呼吸が荒くなるのが分かった。女のそれは怯えと不安によるものだが、殺人鬼の持つものはそれとは違う。満たされる欲望、悪意。衝動だけが強まり人を殺している時よりずっと喜びも鼓動も強くなる。ただし弱者をいたぶる快楽であることは同じだ。女の肌に指を這わせ舌でなぞる。首筋を舐め、強く吸い白い肌に赤い花びらを作った。指先は胸の膨らみから下へと移動していき、薄い下着に手をかけ少しずつ女を守る着衣を外していく。

 女は着るものを奪われ、殺人鬼に組み伏せられた。己を守る拘束を全部剥がされ全ての権利を殺人鬼に奪われている。しかし行為が始まり程なくして殺人鬼による前戯が止まった。殺人鬼は女の両腕を解放すると体を起こしベッドから離れた。

「エヴァン?」

突如終わる行為。安堵の様子で女は起き上がり殺人鬼を見つめる。殺人鬼は一切の感情を顔に出さず女に背を向けたまま自身の服に手をかけた。服を脱ぎ殺人鬼の強靭な筋肉が露わになる。それが意味するのはひとつだけだろう。

「……………!!」

殺人鬼は女の体に覆いかぶさった。女は再びベッドに寝かされ、巨体で覆うように殺人鬼が女を拘束する。女の小さな悲鳴が静寂な室内にこだました。殺人鬼は女の足を開かせて女の体に自身の股間をあてがった。ゆっくりと先端を体内に埋めていく。女の肉体に殺人鬼の肉体が交わる。みちみちと周りの肉を裂きながら狭い肉体に侵蝕していく。異物感に体がよがり体全体が硬直した。異物を排除しようと体全体に力がこもり強張っていく。しかしゆっくりと、確実に殺人鬼の意思によってそれは足の間から深く食い込んでいく。

 女は目を細め圧迫感に耐えていた。殺人鬼は女の体に力が篭っていることを察すると、一瞬だけ行為を止めた。殺人鬼の挿入が停止され女は思わず気を緩める。息を吐き体全体から力が失われ緊張が解れた。無意味な力はシーツを伝ってベットに分散していった。その瞬間、殺人鬼は力を込め自身の肉体を女の奥まで捻じ込んだ。ずぶり、と大きな異物が女の内に押し込まれる。

「…………!」

 突如の事に女の声が甲高く響く。痛みと異物の圧迫感が女を支配した。全てが深く埋まり女の体を圧迫する。互いの一部が結合しているだけなのに体全体が殺人鬼に支配された錯覚に囚われる。さらに殺人鬼は女に覆い被り肌をぴったりと重ねた。圧倒的な体格差によって殺人鬼の頑強な胸部に視界が埋められた。女と殺人鬼の肉体が交わり全てが繋がると殺人鬼は腰を動かし女の体内を刺激していく。女の胎内で殺人鬼の肉体が蠢き乱暴に暴れた。女は悲鳴にならない声をあげた。殺人鬼が胎内を築き上げるたびにか細い声を上げる。その声が殺人鬼の脳髄を震わせた。僅かに保っていた理性が失われ動きは暴力的に激しさを増していく。悪魔と人との交わり。禁忌に対する背徳感が殺人鬼の感情を暴走させていた。

「愛してる」

「好きだ」

殺人鬼は何度も呟いた。女の頭の中にその声は鈍く響いた。女の体を痛みと快楽と慟哭が同時に支配していく。全く質の異なる感覚が同時に体全体を支配し、弱まっては激しくなる。それは女から抵抗する力を奪っていく。悲鳴には快楽が混ざり、拒絶にはもっと激しく抱いて欲しいという願望が混ざりこんだ。女が必死に隠そうとしていた欲求を殺人鬼は見逃さなかった。

「感じているのか?」

 激しく呼吸しながら、女にぴったりと体を密着させ殺人鬼は煽る。女の目が見開き動揺が表情に宿る。

「俺に強姦されて……お前は悦んでいるのか?」

殺人鬼はゆっくりと腰を回し女の胎内を掻き回した。

「ち、違う。そんなんじゃ……」

 女は呼吸を乱し、首を振って否定する。殺人鬼は一旦動きを止め、女の体から自身の肉体を引き抜いた。頭の位置を合わせ、女の唇を乱暴に奪う。暴れるように激しいキス。殺人鬼の唇が激しく動き舐め回すように顔を舐めた。女も舌で答え殺人鬼の暴力的なキスを扇動する。

 殺人鬼は唇を離すと歪に笑い、再び挿入した。太く硬い男の肉体が女に交わる。体液がそれを滑らせすんなりと女の体が殺人鬼を受け入れた。殺人鬼の背中に腕を回し振動に合わせて悦びの声を上げる。ずっと望んでいた。欲していた。邪悪で汚れた肉体が自身の肉体を破る。

 女が喘ぐ度に殺人鬼の欲望が増幅された。その声が淫らに滲む度、殺人鬼は喜んだ。

「愛している」

 殺人鬼は言う。そして邪悪に笑う。もしもこの女が殺人鬼の元から逃げ出し他の男に抱かれることになってもこの女はこの言葉を耳元で囁かれる度に殺人鬼との交わりを思い出すことになるだろう。と言っても、女を逃す気など殺人鬼には全くなかったが。

 何度も行為を繰り返していると殺人鬼の背中に回されていた腕がうなだれ、力をなくした。女の視界は白く染まっていき、自分を犯す殺人鬼と男に犯される自分だけがそこに存在する。殺人鬼が動く度にそれを実感させられる。殺人鬼はしばらく欲望にまかせて女の体を犯していた。力の抜けきった女の状態に気づかないほど欲望に支配されていた。女の喘ぎ声が消え、力が抜けきり完全に殺人鬼に犯されるだけの状態になっている。視界は真っ白で前もよく見えない。頭は何も考えられなかった。

 殺人鬼の蹂躙が暫く続き、体から力が全て奪われると、殺人鬼の吐息が濃くなる。同時に女を犯す速度も増していく。殺人鬼の動きが早く、激しくなっていく。

 女は目を見開いた。殺人鬼の激しい陵辱がもたらす意味を理解し、その結末を想像して女の顔は恐怖に染まる。

「いや、やめて……」

女は力なく拒絶した。殺人鬼の胸を力を込めて押す。それでも殺人鬼の動きは止まらない。

「俺たちの子供が出来るかもしれないな……」

「待って……待って……」

殺人鬼の動きが激しくなる。体ががくがくと震え突き動かされる。

「名前は何にしようか?お前が決めてもいいぞ」

殺人鬼はニヤリと笑った。今までにないほど邪悪に満ちた笑みだった。

「だ、だめ」

女の悲鳴も虚しく胎内に入った殺人鬼の肉が一際、強く押し込まれた。殺人鬼の足でしっかりと足が固定され抵抗することも許されなかった。熱い物が体の中に吐き出されるのが分かった。どろりとした何かが腹部に混じる気持ちの悪い感触。女の胎内に埋め込まれた殺人鬼の肉体は鼓動に合わせて脈打ち、生々しさだけを残した。殺人鬼の遺伝子が女の体に巡り染め上げていく。精が全て女の中に吐き出されるまで足を固定され全く身動きが取れない。射精が全て終わると殺人鬼は肉体を女の股間に擦らせてからゆっくりと引き抜いた。その際、女の甘い声が漏れ、殺人鬼を刺激する。

 行為の一部始終が終わり、荒い呼吸を整えながら、殺人鬼は体を起こした。唾液と汗で汚れた女を見据え、自身が犯した過ちの大きさを知る。虚無感が理性を急速に働かせた。自身で決めたこととは言え、自分は一体何をしているんだと自問する。

「この姿になってから、女を抱くのは初めてだったな……」

 殺人鬼はそう呟くと女の隣に倒れ込み、女の後頭部に腕を回しこんで抱いた。力なく横たわった女の顔が間近で映る。それを斜めに見、空いた手で女の頬を撫でた。女の顔は赤みを帯び、瞳からは光が失われていた。呼吸は早く、快楽から抜け出すのに時間がかかっていた。その様子を確認すると殺人鬼は邪悪な笑みを浮かべた。

 猫や犬を可愛がるのとは訳が違う。男が行った行為は痛みも欲望も快楽も全てが己にのしかかる。それが大きければ大きいほど、悪意の側面が濃いほど、対象となる女にとって抱えきれない重さとなる。女が快楽から抜け出せぬまま瞳が閉じ、眠りの世界へ入っていくのが分かった。

 眠りから覚めて時が経ってもこの真実は消えない。悪魔に犯された女、それを一生背負うことになるだろう。殺人鬼の支配欲が満たされ、狂喜に染まる。同時に、自身が行った罪の重さを実感する。これは本当に女のためだったのだろうか。殺人鬼は自問した。