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【殺人鬼との恋】第12話 ナイフの使い道

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 光の無い狭い寝室。女は下着姿で殺人鬼の前に跪いた。殺人鬼は椅子に腰掛け女の髪を優しく撫でる。女はズボンからはみ出た殺人鬼のそれを口に咥え、舌で撫でた。ぎこちないが丁寧に、時折殺人鬼の様子を確認しながら一生懸命、舌を這わせ口でくわえていた。殺人鬼のものは口の中で大きくなった。女は一度それから口を離すと愛おしげに指で撫でた。

「ごめんなさい……上手くできなくて」

 女は申し訳無さそうに呟いた。

「いや、その頑張りだけで充分だ」

 殺人鬼は女の髪を撫でながら言った。

「可愛いよ」

 息を吸うように吐き出される甘い言葉。経験に乏しい女と比べて殺人鬼は手馴れていた。いつもこうして優しくリードされている。少しは自分も殺人鬼を喜ばせたい。女は申し訳無く思い俯いた。

 そんな女の顔を見ていると途端に殺人鬼の中で愛おしさがこみ上げてきた。女を腕に抱きかかえるとそのままベッドまで運んだ。そしてそのまま覆いかぶさり女の下着の中に手を入れた。中は体液でじっとりと濡れていた。いつでも殺人鬼を受け入れる準備ができていた。

「どうやら我慢できそうに無い。入れるぞ」

 殺人鬼は女から下着を剥ぎ取ると、その中に自身のものを入れた。みちみちと肉を分け入りながら女の中にはいっていく。女は声を上げた。女の肉が殺人鬼の肉に絡みつきぴったりと一つになった。ぴくぴくと鼓動し淫乱に殺人鬼に絡まった。その快楽は今までに感じたことがないものだった。殺人鬼の興奮は頂点に達し、息を荒げながら女の中を突いた。

 

 行為が一通り終わると二人はぐったりと力なく倒れた。女は殺人鬼の広い胸に顔を埋めた。鉄と泥が混じったような野生的な匂いを堪能した。かすかに麝香のような匂いがする。

「ふふ、良い匂い」

「やめろ、恥ずかしいだろ」

 女は両手で殺人鬼の体を抱き枕のように抱きしめた。

「エヴァン、大好き、好き好き」

「やめろ、バカなカップルじゃあるまいし」

 殺人鬼はそう言って拒絶していたが顔は綻んでいた。思わずニヤけそうになる顔に険しい表情を無理やり再現する。だが心は嬉しくて仕方なかった。こんな情けない自分を女に知られてはいけない。必死に堪えていると女は殺人鬼の上に跨り上から殺人鬼を眺めた。

「エヴァンのいじわる」

 拗ねたように言うとそのまま彼の胸に寄り添い顎を撫でた。顎の下に自身の頭を乗っける。

 殺人鬼からは上目遣いに自分を見つめる女が見えた。途方も無い衝動に駆られる。可愛い。今すぐその唇を奪いたい。いや、違うそうじゃない。もっと違う形で喜ばせたい。そうだ、今すぐ使者を街に向かわせてダイヤモンドの指輪を買わせてこよう。うんと大きくて高いものをだ。それをプレゼントしたらどれほどの笑顔を見せてくれるだろう。いやいやダメだ。女の気持ちばかり考えてうつつを抜かしている男など威厳がない。ここはもう少し男として強く無愛想に振舞っておくべきだ。殺人鬼の頭の中は女のことで一杯になった。

 ふと、女は顔を上げるとベッドから離れ窓に近づいた。割れ目の入ったガラスから森の奥を一心に見つめている。神経を集中し、何かを探っているようだった。

「どうかしたか?」

 殺人鬼は問う。女は振り返らずに窓の外を見つめていた。

「車のエンジンの音がしたような気がするの」

 女は睨みつけるように森の奥を眺めていた。

「侵入者だわ」

「あ、ああそうか」

 殺人鬼はベッドに腰掛け作業着に着替えた。いつも通りマスクを付ける。

「これも仕事だからな」

 女との幸福のひと時を邪魔され内心やる気が削がれていた。殺人は仕事としてやっているだけで好きかどうか問われれば別だ。侵入者を殺し魂を生け贄として捧げる儀式の完了。なんて面倒で億劫だ。早々に終わらせて女の元に帰ろう。殺人鬼は思った。

「ああ、そうだ。お前にこれをやる」

 殺人鬼はチェストから大振りの折り畳みのナイフを取り出した。くるりと手元で回転させて刃先を手に持つと女に差し出す。

「危なくなったら殺せ」

女は殺人鬼とナイフを見ると、そっとそれを受け取った。

 

  *

 

 森の入り口。巨大な鉄の扉が出口を阻んでいる。女は扉の向こう側を見据えていた。精神を集中し、自然界にはない人工の音と匂いを探っていた。

「どうだ?」

 異形の姿をした巨大な男から女を見下ろす。片手には鉄の肉斬り包丁を手にしていた。そんな異形の怪物から見下され本来なら畏怖するはずなのに、女は目を輝かせ嬉々として振り向いた。怪物に駆け寄り胸元に顔を埋め男のたくましい背中に腕を回す。

 男はとくに何も言わず女の抱擁を無言で受け入れ、女を静かな目で見下ろしていた。

「エンジンの音が近いわ、複数台来てるみたい」

 女は頬を染め、男に見惚れつつそう口にした。

「そうか、分かった。あとは俺がやる。お前は地下室のロッカーに隠れていろ」

 男は女の肩に手を置き優しく引き離すと肉斬り包丁を握る手に力を込めた。女は少し後ずさりして男から離れる。しかし再び男に向き直り言った。

「ねぇ、キスして」

 男は一度女を見、マスクを取り外してから女の要求に応えた。巨大な身をかがめ女の唇に自身の唇を重ねる。男の口内に女の舌が絡まりあった。

「全く、別れのキスでもあるまいし」

 少し呆れたように男は言った。毎度のように女はキスをせがむ。

「別れ?まさか、人間こどきにあなたが負けるわけがないじゃない。人間なんて脆くて弱い。でもあなたは違うわ。強くて逞しい私の王子様だもの」

 切なく儚げに女は語る。僅かに頬を染め、愛を語る少女のように。男は紅潮する顔をマスクで隠すと、自分に向けられた愛の言葉に少したじろぎ、視線を逸らした。全くこれではどちらが主なのか分かりやしない。

「愛してるわエヴァン」

「俺もお前を愛してる」

 二人はお互いに愛の言葉を交わすと、その場を後にした。やがて鉄の扉が開かれ新たな獲物が男の敷地に足を踏み入れた。事を早く済ませて女の元に帰ろう。そしてまた二人の時間を過ごすのだ。また二人で抱き合ってキスをして……こちらがしたいとは言わなくても向こうから抱きついてくるだろう。思わず仮面の奥の顔がニヤついた。