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【殺人鬼の恋】第12話 歪んだ日常

 朝が訪れた。だが日が昇ることはなかった。この空間はいつもそうだ。時が止まり朝と夜の区別がない。だから自分でその感覚を調整するしかない。言ってしまえばここに住まう生物にもそれは適用されるので睡眠も食事も最悪必要がないのだ。
 ただ人が人として最低限の生活をしなければ人でなくなってしまう気がした。だからレイスはあえて人としての日常を演じている。
 レイスは体を起こす。傍には女が眠っていた。
 そうだ、いまはもう一人じゃない。自分には愛する妻がいてずっとそばにいてくれるのだ。レイスは眠る女の唇にキスを落とす。女は眠たそうにうめき声をあげた。
 レイスは少し困惑する。また女を犯したくなったからだ。自分の理性とは別に下半身は硬直した。そして少し悩んだ後、女の体に覆い被さった。裸になった女の体を弄り、舌で愛撫していく。
「ん、フィリップ…また…」
 抵抗する女の唇を塞ぐと、自身の舌を絡ませた。女の口内はレイスの舌で支配され一瞬だけ息ができなくなる。
「ん、やめて…フィリップ…」
 弱々しく抵抗する女の様子が可愛らしくて仕方がなかった。もっと翫びたい。いつも自分をからかう女を服従させて自分の匂いと体液で怪我したかった。
 レイスは女の体をうつぶせに寝かせると後ろから自身の一部を差し込んだ。女のそれは言葉に反して湿っており、レイスを受け入れる準備が整っていた。
「だ、だめ…フィリップ」
 女の言葉を無視してレイスは自身の挿入する。みちみちと女の肉を掻き分けながらぴったりとひとつになった。
 やはり、この快楽には抗えない。
 これから毎晩、この快楽が続くのだ。この空間にいる限り永遠にこの女は自分のものだ。この女の心も肉体もずっと自分が支配できる。
 そう思った瞬間、レイスは乱暴に女を犯していた。女の嬌声が部屋に響き、闇の中で行われる交尾は、悪夢の様な不気味さを持っていた。時が止まった空間で、決して終わることのない悪夢。女はこれからずっとそこに囚われるのだ。
 女は顔も見えず姿も見えないそれに犯されていた。とめどなく快楽が断続的に続き、力に強弱をつけながら中身をかき乱していく。
 今までこんな犯し方をする男はいなかった。レイスが魔物であるということを否応なく理解させられた。けれども自身の中でレイスに対する恋が膨れ上がるばかりで、理性を働かせることがてきなかった。まるで心が支配されていく様だ。
 背中にレイスの体が覆いかぶさり、女を突き上げる。何度か果てたが構うことなく運動は続いた。耳元でレイスの吐息が激しくなり、運動を早めていく。まるで強姦されている様だ。合意の上なのにそんな錯覚を覚える。
 再び女の中にレイスの精が放たれる。それは女の体と交わり一部として取り込まれた。
「ああ」
 無意識に女の吐息が漏れる。行為が終わるとレイスは力なく女の背に被さった。
 レイスの体重の重みに身動きも出来ず、拘束された。レイスは女から自身を引き抜くと乱れた女の髪を撫でた。その指が頬に触れ、ゆっくりと撫でる。
 レイスが身を起こし女と向き合うとレイスは愛おしげに女を見つめる。
「ごめん、強引だった?」
「そんなことはないかも」
 女は目線をそらしつつ答えた。恥ずかしくてレイスの顔が見れない。
 首元までかかるシルバーブロンドの髪、端正な顔立ち、華奢ではあるが肉付きのよい肉体、血と獣の匂い。全てが女を麻痺させる。生まれて初めての抱く熱い感情。異性に対する狂おしい気持ち。レイスを男と認識してからますます感情が激しくなっていた。かつてのようにレイスを弄ぶことができなくなっていた。男は慣れているはずなのに。これでは立場が逆転している。
 対するレイスは女と交わったことによって、女に慣れたようだった。女の表情の変化を楽しむ余裕が生まれていた。
「もう起きようか、このままじゃまた君を抱きたくなっちゃうから」
 レイスは優しく女に口付けすると、女に服を着せた。女はただされるがままになっていた。

 *

 二人は服を着ると、手を繋いで外に出た。歩幅を合わせ、デートをするような感覚で森へと出る。薄暗い森は周辺に点在している電球の明かりによって辛うじて位置を確認できるようになっていた。女にとっては暗く場所も分からなくなりそうな迷いの森であったが、レイスにとっては慣れた庭だ。レイスは女の手を引いて、慣れた足取りで森の中へと進んでいった。
「この辺りは自然の食べ物が豊富なんだ。買い出しに行かなくても食べ物には困らないよ」
 レイスは森に群生した野イチゴを摘み取ると女に差し出した。太陽の光もない暗い空間でもイチゴは強い繁殖力で群生していた。不思議なものだ。もしかしたらこの空間は外とは質そのものが違うのかもしれない。
「美味しい、普段食べてるイチゴより味が濃い」
「喜んでもらえてよかった!」
 無邪気に笑うレイス。あの夜とは別人のようだった。思い出すだけで顔が赤くなってしまう。心を支配される感覚がこれ程までに甘美なものだとは知らなかった。抱かれたばかりなのにまたレイスに求められたいと思ってしまう。
 そんな女の様子を察したのか、レイスは口に野イチゴを含み、体を屈ませて女の口に運んだ。お互いの舌が絡まり甘酸っぱい味が口内に広がる。
「…どう?」
 レイスが問う。女は顔を真っ赤にしてレイスを見つめていた。体は緊張のあまり硬直して動かなかった。ただ、レイスを見上げることしかできない。レイスは優しく微笑むと女の体を胸に抱き寄せた。そして両手で女の体を包み優しく抱いた。


 森に生えていた山菜を摘んで二人は小屋に戻った。そして二人は車に乗って買い出しを行った。本当は女一人で行くべきなのだが道が分からない。レイスは透明になった状態で助手席に乗り、女の運転する車で街を出た。時刻は夜8時半。これくらいの時間帯のほうが人も多く逆に目立たない。深夜の来訪者など人の記憶に嫌な形で影を落としてしまう。
 女は最寄の小さな町で食料とサバイバルブックと山菜辞典、生活用品と替えの服装をまとめて購入した。これからこの森深くで生活するのだから準備は大切だ。女には多額の貯金があった。女が働いてきた中で積み上げたものや男から貢がれたものを少しずつ財産として蓄えていたのだ。そして母から受け取った気の遠くなるほどの貯金。それだけで女一人生きていくには十分な額だった。
 女そのものはどんな新しい場所でも生活できるだけの力は蓄えていた。まさかそれが異形の魔物とすることになるとは思ってもみなかったが。
 ひとつ心配するとするならば、女の関係者が自分を探し出すかどうかだ。一応変装して身なりを隠しているし警察に怪しまれることもなかった。さらに言えば殺人鬼の住む工場跡地は曰く付きの場所で好き好んで人が立ち入ることはない。それでいて具体的な場所もあやふやで、廃墟としての存在はなんとなく都市伝説のように伝わってはいるが地図にすらその場所は示されていなかった。逆に言えばそこまで過去に人の目を背けさせたくなるような何かがあったのだろう。見つかることはまずないだろうが外への外出は最低限に控えなければならないだろう。

 買出しを終えて自宅へ戻り、購入したものを整理した。
 生活用品や衣服はチェストに放り込み、食料は冷蔵庫に保管した。長く保管できる缶詰類は床下の収納に収めた。
 女はふと窓の外を眺めた。レイスが箒で外の掃除をしていた。殺人鬼でありながら彼は真面目で几帳面だ。女は決してマメな方ではない。その本質は割と大雑把でものぐさだ。掃除もあまり好きではなくすぐ散らかしてしまう。レイスは掃除が好きなのか楽しそうだった。こういった性格的な相性の良さは非常にうれしい。
 女がレイスを見つめていると、その視線に気づいたのかレイスが振り返り女に笑いかけた。女は途端に顔を赤らめて視線を逸らした。

 

*

 

 廃墟にはごく稀に人が迷い込むことがあった。侵入者が入り込んだ段階で扉は閉まり閉じ込められる。レイスは侵入者を殺し、生贄に捧げることが仕事だった。
「また入り込んだみたい」
 女との食事の時間。山菜を口に運びながらレイスは告げた。
「そうなの、頑張ってね」
「うん、いつも通り君は隠れていて」
 レイスは女の唇を奪うと、武器を手に外へでた。最近分かったことだが、生贄に捧げるというのは目的ではない。レイスの仕事は過程を求められ結果は問われない。殺害は必須項目ではないのだ。
 レイスは侵入者を見つけるとわざと泳がした後に、発電機をすべて修理させた。これは女が初めて迷い込んだ時に判明したことだが、生き物がこの空間で活動すればするほどその生命力が捧げられ霊力となって満たされる。生贄に捧げればその分大きい霊力が入るが、生者が自分の前で逃げ惑うだけでもかなりの霊力が捧げられた。レイスは生者に廃墟から脱出する方法を教え、ある程度活動させて、逃がした。それを何度も何度も続けた。あの頃とは逆で今度は人を生かすことを決めたのだ。女が言ったようにこれからは沢山の人を救おう。


 レイスのこの行為が、後に惨劇を生むことになるとは思わなかった。