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【殺人鬼の恋】第9話 帯ほどき

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 レイスは女が用意した車に女と女の荷物を押し込んだ。女の車はワゴンタイプの大きめの車だった。レイスは運転席に乗り込むと器用な手付きでハンドルを回し、発進した。前職の経験から運転自体は慣れていた。同時に嫌な記憶も蘇るが今は我慢だ。

 レイスは車を街から少し離れた森にまで走らせた。街灯の明かりは皆無となり周辺は闇に染められ、照らすものは車のライト1つだった。それでもそこは彼のテリトリーだ。迷うことなく奥へと進んだ。助手席には女が乗っている。二人の間に会話はなかった。何か声をかけようとしたが言葉が思いつかなかった。女の頼みとはいえ悪いことをしている気分だ。今の自分は間違いなく誘拐犯以外の何者でもないだろう。
 レイスは森の奥深く、廃墟の入り口から中へと移動し空いたスペースに車を止めると女を自分の住む小屋まで連れて行った。

 廃車工場の跡地にある小さな小屋がレイスの住処だった。廃車工場に足を踏み入れると時が止まったような錯覚を覚えた。異質な廃墟は人が手をつけていないため水道も電気も通ったまま保存されていた。停止した空間。その表現がしっくりくる。
「ついたよ」
「ありがとう」
 女は廃墟を見渡した。レイスと初めて会ったその場所は、最初に訪れた時から全く変化がなかった。スクラップや鉄くずが周辺に転がり蛍光灯の明かりがチラチラとかろうじて周辺を照らしていた。しかしそれでも闇は濃く目が慣れない。

 仕方ないのでレイスに手を引かれ小屋の中に入る。
初めて見るレイスの部屋は寝具とチェストと食料を補完する冷蔵庫があるだけの質素な部屋だった。しかしきちんと整頓され小綺麗にまとまりシンプルに美しい。
「割と綺麗にしてるのね」
「うん気になるんだよね。こういうの。寝る場所だけど、僕は床でシーツを敷いて寝るから、よかったらこのベッド使って」
レイスは布団を整えながらパフパフとベッドと叩く。
「え?あ、うん。そうだね」
歯切れの悪い女の返事だった。
「もしかして嫌だった?僕のベッド。僕と一緒の部屋で寝るのが怖い?僕別の部屋で寝たほうがいいかな」
「そんなことはないわ」
 女は強く断言した。レイスは床に、女はレイスのベッドで横になった。
 湿った部屋の匂いが充満する小さい部屋。ベッドにはレイスの匂いが染み付いていた。秋の枯れ草のような、自然界と同調した匂いだ。山に住む狼のような獣臭さと、枯れた草木が交わったような匂いだった。
「ねえ、いいの?しなくて……」
「え!何を!?」
 レイスは驚いて跳ね起きた。おそらく緊張していたのだろう。
「もう!女から言わせないで!その……夜の営み……」
レイスはしばらくキョトンとしていたがその意味を理解してみるみるうちに顔を紅潮させていった。顔を真っ赤にして狼狽する。
「いや、したいけど上手くできるかわからないし、下手で失望されたくないし。それにそういうのって…お互い納得してからじゃないと……いや別にしたくないわけじゃないよ。でもそういうのはちゃんと話し合ってから……」
レイスはもじもじと語る。
「レイス何言ってるの?」
 女はベッドから起き上がるとレイスの元へと降り、正面から向き合った。

「ひやああ!」

 レイスは思わず飛び退いた。女の胸元が目に入ってしまう。さらにその後の行為まで妄想してしまう。もう駄目だ。意識してしまって普通を保てない。

「やっぱりだめだよ!僕は外で寝るよ!」

「そんな、本当にいいの?あなたが攫ってくれたのに……」

 レイスは思わず目線を逸らす。バツの悪そうな顔だ。
「僕は殺人鬼だよ」
「……」
「今までたくさん殺した。今だって何人か殺してる。だってそうじゃないと自分を保ってられなかった。いつの間にか人殺しにされて大量殺人させられて、自分は狂ってるんだって、殺人鬼だって思わなきゃ、やってられなかった」
「……」
「僕は汚れてるんだ、だから君を抱けない」
 レイスの告白。こんなことを言うだけでだいぶ勇気を使った。
「私もなんども考えたよ、人をたくさん殺したあなたを受け入れられるかって。それで思ったの、人はいつも人を殺してる。今この瞬間、戦争で何人もの人が死んで、人間は何百人以上の人間を大量殺戮してきた。それだけじゃない。自分たちの利益のために拷問していたぶって楽しむ奴もいる」
「そんなこと僕だって何度も思ったよ。でも人殺しは人殺しだ」
「だったら、それと同じ数だけ救おうよ。私の命を救ってくれたみたいに」
 女はレイスに近づく。その肩に手を置き覆いかぶさるように体を近づけた。
「レイス、キスしていい」
「え、あ…うん」
 レイスの唇に女の唇が重なる。初めてのキス。表面だけを重ね合わせ体温が優しく包み込む。レイスの心が幸福で満たされていく。

「なんか、初めてした時と違うね。あの時はマスク越しだったからかな」

 照れたように笑うレイス。

「違うよ。好きな人とするキスだからだよ」

 女は微笑んだ。胸はどくどくと高鳴り破裂しそうだった。

「どうする?今日はこれくらいにしておく?」

 目の前にある男女の境界。それを超えるか否かの選択。レイスはなんとなく満足していた。このままでも充分かと思い始めていた。

「まだ始まったばかりだよ。僕たちは大人なんだから」

 そうだ。大人だ。だからもっと先のことをしてもいいはずだ。そんな自分への言い訳が理性を飛ばした。

 レイスは女の肩を掴んで唇を奪うと舌を女の中に入れた。女はそれを受け入れた。ゆっくりと互いの舌を交差させ絡めあう。慣れないレイスの舌が戸惑い逃げるのが分かった。

「ふふっ。かわいい」
 女は唇を離すと微笑んだ。
「また僕をからかって……」
 レイスは視線をそらしてもぞもぞとたじろいだ。その股間は大きく膨張している。隠そうとしていたが隠し切れなかった。
「わかった。私がしてあげるね」
「な、何を」
 女はレイスの唇に軽く口づけするとレイスの腰の包帯を解き始めた。その意味を理解してレイスは悲鳴をあげる。
「ま、ま、まって!まって!まって!」
 慌てて女の手を止める。
「な、何?」
「しゃ、シャワー浴びてくるから!まってて!」
 レイスは極端に動揺しながら立ち上がった。逃げ出すかのように扉の前まで移動する。
「シャワーなんてあるの?」
「あるよ!工場時代社員が使ってたのがまだ残ってるから!これでも毎日入ってるんだよ!」
レイスは解けた包帯を結び直しぺたぺたと歩き出す。その後を女もついていった。
「なんで付いてくるの…?」
「シャワーあるんでしょ?私も入りたい……」
「残念ながら1つしかないんだよ順番だからまってて」
「じゃあ一緒に入ればいいよ!」
「えーーー!そんな破廉恥な!」

女はむすっと膨れた。
「何言ってるの!さっきから何なのレイス!私はあなたにさらわれた設定なんだよ!あなたに無理やり連れ去られたのに襲ってくれないし私から逃げるし私が魅力ないみたいじゃん!」
「で、でも…」
「でもじゃない!服を脱ぎなよ!」
「ぎゃーーーーー」
レイスは女の手で服をはぎ取られた。包帯がグルグルと解かれレイスは回転しながら床に倒れた。