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【殺人鬼と三角関係】第12話 殺人者たちの前夜祭

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 クリスマスが近づいていた。季節は12月を迎え街は七色の光とイルミネーションで鮮やかに彩られた。木々に絡みつくカラフルなLEDライトが輝き、動物を象った可愛らしい模型が設置され、汚らしい街並みがその時だけ色鮮やかにそして統一感をもった美しさを描く。待ち行くカップルたちを見つけるたびにケヴィンは心踊った。実典に買い物に連れ出され荷物を手一杯に持ったケヴィンは、実典の後を追った。
「ミノリさんは何か欲しいものはありますか?」
「欲しいもの?」
 実典は車のロックを解除し、荷物を車に乗せながら考えた。
「欲しいものかー、欲しいものは大体自分で買っちゃうからなー」
 ケヴィンから荷物を取り上げて車に乗せると後部座席のドアを閉め助手席にどっかりと座った。ケヴィンも運転手に乗り込みブレーキペダルを踏みながらエンジンをかけた。今の時代は鍵を回す必要もなく、スイッチ1つで起動できる。文明の発達には何度も感心させられる。
「何かないんですか?欲しいもの」
 実典は助手席で気だるげに伸びをするとはっとした。
「一個あったかな」
「何です?」
 ケヴィンは目を輝かせて聞いた。
「いや、その人には言いにくいんだけど…」
 実典はもじもじと唸った。
「なんでも言ってください。ミノリさんのことをもっと知りたいんです」
 ケヴィンは運転しながら凛々しく言った。路上に車を出すもののあいにく渋滞になっていて車はほとんど動かなかった。
「…エ…ゲ」
「はい?なんですか」
「エロゲ…成人向けのアダルトゲーム…」
「えっ!」
「いや、その感動できるゲームがあるらしくてやりたいんだけど希少で手に入らないらしくて、欲しいとしたらそれかな…」
 実典はボソボソと気まずそうに喋った。
「そうなんですか。もし手に入ったら僕にもやらせて下さい!」
 ケヴィンは笑う。さすがクリスマスにプレゼントするものではないだろう。別の機会でサプライズにプレゼントしてやろうと思った。そういうのは不意打ちで行うのが一番良い。新しい計画を思いつき楽しそうに笑うケヴィン。実典も微笑んだ。こいつを見ていると楽しい。そう思った。そんなことを話しているうちに車はようやく走り出しのろのろと動き始めた。窓からはクリスマスのイルミネーションの輝きがよく見える。
「そういえばクリスマスが近いですね。日本だとカップルたちが祝うお祭りのような感じなんでしょう?」
 ケヴィンは言った。そして覚悟を決める。この会話から実典とのデートにこぎつけるのだ。そしてクリスマスの夜には……。
「…クリスマスイブは僕たちも」
「ケヴィン」
 ケヴィンが言いかけると実典が強い語気で遮った。車は再び渋滞に飲まれ速度を止める。ケヴィンは思わず実典を見つめる。
「クリスマスは中止になった」
 実典は渋い顔で言った。ケヴィンは驚いた顔で実典を見る。
「中止って…それじゃあサンタさんは!?プレゼントは!?子供達の笑顔はどうなるんですか!」
「サンタクロースは事故を起こして今、刑務所に服役している。だからお前も運転には気をつけろ」
 実典の顔は本気だった。
「そんな!」
「よって我が家もクリスマスは中止だ」
 ケヴィンは泣きそうになった。
「そもそもクリスマスっていうのは家族で祝うものだろ!なんで恋人同士の聖典になってるんだよ!なにが聖夜だ!性夜の間違いだろ!10月生まれ多すぎなんだよ!クリスマスなんてクソ喰らえだ!」
 モテない女は我を失い吠えた。ケヴィンは涙を堪えるのに必死だった。

 *

「エドワードさん、クリスマスが近いんですよ」
 ケヴィンは家に戻るとリビングでテレビに魅入っているエドワードに言った。
「そのようだな」
 エドワードはバカバカしいのかケヴィンの顔を見ようともしない。そもそもクリスマスとは教会で静かに祈りを捧げるものだ。なんでこんなお祭り騒ぎになってるんだ。キリスト教でもないのに。
「この国でのクリスマスは恋人たちにとって特別な日なんですよね」
「だから何だ」
 エドワードは苛立たしげに問い返した。こいつの頭の中には恋愛のことしかないのか。
「ミノリはクリスマスが中止になったっていうけど僕はミノリに何かプレゼントしたいです。用意しないと」
「一週間で挫けた奴がか?」
 エドワードはケヴィンの職場体験の事を言った。ケヴィンは一瞬言葉に詰まらせる。
「ミノリは自分が欲しいものは大抵自分の金で買ってるからな。はっきり言ってしまえば金額の低いものはプレゼントにすらならない」
 ケヴィンはミノリと初めて外出した日のことを思い出した。数万円もする自分の服をポンとカードで買っていた。
「まあ手堅く装飾品になるだろうが……安物は意味がないだろうな」
 エドワードはカレンダーを見た。
「クリスマスまであと20日…週5で働いたとして十数万ってところか。今は丁度過渡期だからな。短期のバイトなら日払いだしクリスマスまでにはなんとかなるだろう」
 エドワードはにやりとケヴィンに笑った。
「あ、ありがとう」
 それがケヴィンの計画の始まりであった。ケヴィンは十数万のプレゼントを買うためにエドワードの職場でアルバイトを始めたのだった。

 ケヴィンの仕事はもっぱら機材の搬入作業だった。ケヴィンは自慢の怪力を生かして数十キロもある機材をビルの屋上まで運んだ。肉体労働は苦ではない。人知を超えた人ならざる肉体のおかげで効率的に大量の機材を運ぶことができた。ただ、注意力には欠けていたため精密機械の搬入は避けた。正直、気性の荒い男たちの間で働くのは苦痛以上の何物でもなかったが、その先に実典との夜があると思えば耐えられた。ケヴィンは必死で働いた。
「本当はミノリと二人でデートしたいんです」
 アルバイトの昼休みケヴィンとエドワードは二人並んで缶コーヒーを飲んでいた。
「だったらすればいい」
 エドワードはそっけなく答えた。ケヴィンは首を振る。
「ミノリはそういうの嫌いだって」
「そうか」
 エドワードはそれだけ言うとコーヒーを飲み干した。
「焦る必要もないだろう。半ば脅すような形で交際までこぎつけたんだ」
「……そうですよね」
 ケヴィンは空を見上げた。
「プレゼント……。何がいいかな」
「そればかりはな……。女子に聞いたらどうだ。この前飲み会で知り合った女がいただろう」
 女子……。ケヴィンは携帯電話を取り出し起動させた。ディスプレイには盗撮した実典の写真が待ち受けにされていた。一瞬ケヴィンの顔がだらしなく弛んだ。そして一つのアプリを起動するととある人物に電話をかけた。

 *

 実典とウィリアムの二人は居間でこたつに座りながらテレビを鑑賞していた。居間とリビングは襖などはなく直接つながっているのでテレビを回転させてしまえばこたつに座りながらテレビの観賞が可能だ。それくらい実典家にとってテレビは重要なアイテムとなっていた。
「どいつもこいつもクリスマスイブのことばっかだなー」
 実典はチャンネルをコロコロと変え、意味がないとわかるとテーブルの上に力なく投げた。からんという軽い音が鳴った。
「ミノリはクリスマス嫌い?」
 ウィリアムは問う。
「ああ、嫌いだね。どいつもこいつもカップルだらけで。クリスマス本来の目的を忘れてるよ、くそっ」
「ソウ…」
 ウィリアムはしょんぼりとした。
「うーちゃんはエドワードやケヴィンと一緒に外で遊んできなよ。イルミネーションを見るだけでも結構楽しめるから」
 ウィリアムは俯き、暗い影を落とす。
「デモオレガイルトみんなイヤなオモイスル」
「……」
「オレはミニクイカラ」
 実典は沈黙した。
「ウィリアム、私が言えることは1つだけだ。他人は他人だ。お前のことを知らない第三者がお前を見て何を言おうともそれは他人が言ったことだ。私はありのままのお前を受け入れている」
 ウィリアムは顔をあげて実典を見た。
「だから私は赤の他人が私に対して悪意を向けたとしてもイヤな思いなんてしない。ましてやウィリアムがいるから嫌な気持ちになるなんてものはない」
 醜い顔。ウィリアムはそのせいで多くの冷たい目を受けてきた。自分のことだけなら耐えられる。だが母の代わりである実典まで不条理な目にあって傷つけられるのは自分のことより辛かった。ウィリアムは知っている。近所の人間から謂れのない陰口を受け、何度も嫌味や苦情が彼女の電話に届く。彼女はその度に悪意と向き合った。
「オレ、醜イ、ダケド」
 ウィリアムは呟く。
「優しくしてくれた女の子がイタ」
 唇が震える。実典は黙って聞いていた。
「オトナタチガ、オレたちを笑った、女の子、オレを庇った。ソシタラソイツラ、女の子を、殴って」
 ウィリアムは目を見開き自分の腕を抱いて震えていた。
「オレノセイデ、オレノせいで!!」
 忌まわしい記憶が蘇る。邪悪な大人たちに犯される少女の姿。気づくと大人たちはバラバラの肉片になっていた。だが少女も死んでいた。初めて人を殺した瞬間、そして殺された瞬間。ウィリアムは頭を抱え硬直していた。苦悩が彼を支配する。穢れた自分が、醜い自分が、罪深い自分が、こんな幸せな生活を送ってはいけない。自己嫌悪だけがウィリアムを支配していた。ウィリアムが痛みで硬直しているとその背に優しく暖かな感触が包んだ。
「大丈夫」
 実典は言った。ウィリアムの肩に手を置き、巨大で歪んだ背に頬を当てた。
「大丈夫だよ。ウィリアム」
 小さく、囁くように。
「周りの人間が許さなくても、私があなたを許すから、今日から私があなたの母だから……あなたが困ったら私が助けるから。だから大丈夫…」
 ウィリアムは頭を抱えたまま声を押し殺して泣いた。
「大丈夫、ウィリアムのことは私が守るよ」
 実典は少年を抱きしめそう言った。

 *

 都会特有の喧騒が漂う街中、ケヴィンは立っていた。正確には都会ではない。実典の家から徒歩1時間ほどの場所にある栄えた準都会だ。それでもケヴィンには十分だった。日本のことなどよく分からないしあまり雑然としすぎていても選ぶのに困る。ただそのせいでケヴィンは多くの通行人の視線を集めていた。当たり前だ。身長は2メートル近くあり体型はモデルのように筋肉質で整っている。髪は銀髪で顔立ちは多少険しいものの異様に美しい。これが本当の都会なら多すぎる多種多様な人間のせいで目立つこともないだろう。通り過ぎる人々が皆一様にケヴィンを見ては黄色い歓声を上げる。
「ケヴィンくんお待たせー」
 そんなケヴィンのもとに走って現れたのは一人の若い女だった。ケヴィンの元に現れた豊田カナ。かつて飲み会で出会い、一夜を過ごすはずだった相手。久しぶりに会う彼女の髪は黒く染めなおされ、髪質もストレートに整えられていた。派手だった化粧は清楚に抑えられている。服装はやはりカラフルで華やかだったが前見た時よりも落ち着いている。
「びっくりしちゃった!ケヴィンくんがデートしたいなんていうから!」
 豊田カナは華美な顔立ちに満面の笑み浮かべて言った。大人びた顔立ちに映える笑顔はあどけなくいつも以上に美しかった。
「デートじゃないよ」
 ケヴィンは言った。
「うっそー!じゃあなんで呼んだの?」
 豊田はわざとらしく高らかな声を出す。
「好きな人にあげるプレゼントが分からなくて……。同じ女性である豊田さんの意見を聞こうかなと思って」
「……」
 豊田の目に一瞬怒りが宿った気がしたが、その顔はすぐに人当たりの良い笑顔に変わった。
「ふふっ!良いよ!じゃああたしが案内してあげる!こっちよ!」
 豊田はケヴィンの手を引いて歩き始めた。皆一様に二人を見た。町並みを歩く美男美女。注目の的だ。
 エドワードと話し合った昼休み、ケヴィンは豊田カナに実典のプレゼントを選ぶことを手伝ってもらうことを思いついた。そして連絡先に登録した豊田に電話し待ち合わせをしたのだった。豊田は変わった。前よりも見た目清楚で美しかった。華やかな顔立ちは実典以上の美人と言っても良い。それでもケヴィンは豊田を好きになれなかった。あの時、自分が人殺しだとわかった時の歪な目、そして先ほど一瞬見せた怒りの目。そう言った小さい事が一々気になる。実典はこんな目をしない。明るく人当たりの良い笑顔に潜められた怒り。それが気に食わない。実典なら気に食わないことがあれば素直に顔に出すし、文句があればはっきりいってくる。だから気になってしまう。彼女が持つ大人特有の狡さが。やたらと香水臭いのも正直言うと好きではない。内心、豊田に頼ったのは間違いだったかと考えたが、とにかく今は頼れる相手が彼女しかいない。黙って付いていくことにした。
「ケヴィンくんはちなみに予算はいくら用意してるの?」
「えっ、あ。15万円かな」
「ハァ!!?そんなに高いものを渡すの!!?」
「あの人は自分の好きなものは自分で買っちゃうから。それに」
 ケヴィンは今来ているロングコートをひらひらと揺らした。
「この服も全部その人に買ってもらったんだ。5万円ぽんとだしてさらに3万円。ずっと使うものだから良いものを持っとけって」
「あ、そう」
 豊田はあからさまに険しい表情を見せると宝飾店に入って行った。店内の客のほとんどはカップルだった。クリスマスというのもあってか店のショーケースには様々な宝石が並んでいた。正直言ってしまえばケヴィンには全て同じに見える。違いというものがよく分からなかった。
「みんな同じに見える……」
「男の人ってそうよね。じゃあこれはどうかな」
 豊田は派手なオニキスのネックレスを指差した。黒い石の周りを金の鎖が模様を描いて象っている。
「わあ、いいですね」
「ねえいいでしょー」
 豊田は両手を合わせてニコニコしながら言った。そして次々と宝石を選び、店員に頼んでショーケースの上に並べさせた。どれも50代以降の女性や男性向けにデザインされたアクセサリーばかりだった。朱雀の形をかたどったルビーのキーホルダー、十字架にゴテゴテとクリアガラスがはめ込まれたネックレス。多種多様なアクセサリーにケヴィンの目は輝いた。
「あ、これも良いんじゃないですか!?」
 ケヴィンは人一倍はしゃぐと目を輝かせてショーケースに飛びつきかじりつくように眺めた。思わず周囲の目が集まる。豊田は眉間をしかめてケヴィンを見た。ショーケースの中央には青い石が深く輝くブローチがあった。滑らかな肌質を持つ青白い石に銀色に発色するフレームがアラベスクのように絡みついている。それは草の葉のようにも見えたし、花の花弁のようにも見えた。
「ホワイトゴールドのロイヤルブルームーンストーンのブローチですね。こちらは当店でも一番のオススメですよ」
 艶やかな店員が微笑みかけショーケースからブローチを取り出した。
「これにします!これ買います!」
 ケヴィンはきゃんきゃんと吠えた。
「かしこまりました」
 店員はにこりと笑いブローチを手にとって奥へと歩いていった。
「ちょっ、ケヴィンくん本当にいいの!?」
「決めました!ミノリがこれをつけたらきっと綺麗ですよ!楽しみだなあ!」
 ケヴィンはニコニコと笑った。豊田はケヴィンの隣に立ったままつまらなそうにその様子を見た。
「あたしが来た意味ないじゃん」
 小さく呟いた。隣にいるのに、隣にいる気がしない。一緒にいるのに、この男は自分を全く見ようとしない。不愉快だ。

「あれ?ケヴィン?」

 突如、二人の背後から甲高い声が聞こえた。癖のある特徴的な声だ。振り向くとケヴィンがよく知っている人物がいた。
「ミノリ!?」
 ケヴィンは驚いて言った。運命的な出会いにその表情が輝いた。
「偶然だね!」
 実典は笑う。そしてケヴィンの隣に立っていた豊田を見た。
「あら?ケヴィンくんの彼女?可愛らしい人ですね。私実典と言います。ケヴィンくんのお友達です」
 豊田は一瞬だけ険しい表情をしたがすぐに元に戻り笑顔で答えた。
「豊田カナっていいます。今日はケヴィンくんデートできました」
 豊田はケヴィンの腕に絡みついた。
「違う!」
 ケヴィンは思わず豊田の腕を払いのけて叫んだ。
「この人は彼女じゃない!デートじゃないです!今日は買い物に付き添ってもらっただけです!間違えないで!」
 ケヴィンは慌てて弁解した。
「ふふっ、ケヴィンったら恥ずかしがってるのね。大丈夫、わかってるから。じゃあ豊田さん、ケヴィンのことお願いします」
 実典は上品にお辞儀をすると踵を返して店を後にした。ケヴィンは悔しげに拳を握りしめ歯を噛み締めた。ギリギリと不快な音が鳴った。豊田は複雑且つ煙たい面持ちでケヴィンの様子を見ていた。

 *

 店を出るとケヴィンは豊田に礼を言い、すぐさま帰路につこうとした。とにかく実典の誤解を解かなければならない。豊田を後にして駆け出そうとすると、背後から豊田に呼び止められた。
「ケヴィンくんさ」
 背を向けるケヴィンに豊田は言う。
「なんですか?」
 ケヴィンは振り返り笑って答えた。都合の良い奴だ、豊田は手を握り締めかすかに震えた。
「本当に人殺しなの?」
「……そうですよ」
 ずっと聞きたかった質問。だがそれに答えたケヴィンの目が一瞬で曇る。
「嘘、だって全然そんな感じしないじゃん」
 豊田は納得しなかった。
「嘘じゃないですよ。殺して殺して殺しまくりました」
「ねぇ、何人殺したの?」
「数えることを諦めるくらい」
「それじゃわからないよ」
「200人……いやもっとそれ以上かな」
 豊田の表情が歪み瞬間的に身構えケヴィンを避けた。ケヴィンの目が虚ろになる。暗い瞳で身構える豊田を見据えた。恐怖が豊田の体を支配した。
「本気で言ってるの……?本当の話なの……?なんであの人はあなたと付き合えるのよ……、おかしいよ。絶対おかしい。普通じゃない!狂ってる!アンタたち狂ってる!」
「……」
 ケヴィンは豊田を冷たく見下げた。
「そのこと、実典さんは知ってるの?」
「知ってますよ。その上で僕を愛すると言ってくれました」
「嘘だ!無理に決まってんじゃん!人殺しだよ!?人殺し…殺人鬼……まともな人間ならあんたなんかと付き合えない!」
 豊田は動揺しながら言った。
「あいつはあんたのことなんか愛してなんかいないわ!きっとあんたの顔と体が好みなのよ!あんたがちょっとイケメンだったから!あの女が惚れてるのはアンタの見た目だけよ!」
「そんなことありません」
 ケヴィンは不機嫌になった。
「なんで殺したのよ、殺すとき何を思ったのよ、お前なんか、お前なんか……」
 豊田は後退りすると走って逃げ出してしまった。ケヴィンは追うこともせず、そのまま家に向かって歩き始めた。別に全ての人から好かれなくてもいい。自分には実典がいる。それ以外の者のことなどどうでもいい。
「……お前なんかが……愛されるわけがない…」
 ケヴィンは無意識に呟いた。豊田が最後に言い放った言葉を。