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【殺人鬼と三角関係】第4話 血塗れの懇親会

朝。白い洋室に大きく設置された窓から光が差し込み、朝であることを告げた。実典がニートになり親の金で暮らすようになってからすでに数週間が経っていた。平日の遅い朝の目覚めにも慣れて来た。殺人鬼との奇妙な共同生活も慣れるものだ。実典は両手で包み込んでいた抱き枕を存分に抱きしめその胸に顔を埋め温もりを堪能した。日光と体臭の混ざったような獣特有の匂いが心を癒した。この両手に収まりきらない巨大な感触もちょうどいい。

  ん?胸?温もり?体臭?
 実典は寝惚けた頭で懸念する。そもそも抱き枕なんて使っていたか?なぜ枕に温もりがあるんだ?実典は不審に思い1つの結論に辿り着く。自分が犯した過ちに畏怖しながら恐る恐る抱いているそれをみた。
「おはよう。ミノリ。起きて?朝だよ」
 目の前には銀髪の外国人の顔があった。狂気を忍ばせた虚ろな目でこちらをみている。その顔は険しいが整っており、端正な顔立ちをした美青年だ。だが、どんなに外見が整っていても中身は殺人鬼であるわけで……。実典は事実を把握した瞬間、飛び起き布団を弾き飛ばしてケヴィンから即座に離れた。
「け、けケヴィン!なんでここにいるの!?鍵はかけたはずじゃ!」
 気を動転させながらケヴィンに問いかけた。
「まさか、私と……」
 実典は顔を真っ白くして自分の体を見る。服に乱れはないようだった。しかしもし万が一のことがあったとするならば……実典は最悪の事態を想像し思考を停止させる。あまりのショックに失神しそうだ。
「失敬な!ミノリさんが僕を部屋に連れ込んだんですよ。でもミノリさんを襲うと天罰が下るので何もしてません」
 その我慢がいかに拷問に近かったかケヴィンは一生懸命に訴えた。実典は問いに対する答え以外の言葉など聞いていなかった。何もなかったことに心のそこから安堵した後、頭を抱えながら自分の過ちを必死に確認する。
「私が連れ込む!?ケヴィンを!!?ベッドに!!?何やってるんだ私!どこでそうなった!!?」
 実典は自分を責めながら昨晩のことを必死に思い出した。そう、昨晩の深夜。実典は物音を聞いてリビングへ降りた。そこまでは覚えている。実典は昨晩酒を飲みそのまま床についた。しかし深夜、物音で目覚め、寝ぼけた状態の上、酔いの覚め切らぬ頭でリビングに降りたのだ。ケヴィンはキッチンで水道を見つめていた。喉が渇いたため水を飲もうとしていた。そしてシンクには水の張ったステンレスのボウルが置かれていた。その中には食器がいくつか入っており、ガラスのコップが水に浸かっていた。ケヴィンは水道を流すことで水道代がかかることを申し訳なく思っていた。そしてしばらく思慮した後そのボウルからコップをとり、張った水をすくい上げだのだ。こうすれば水道代が無駄にかかることはない。無職な上、居候である身なのだから生活費には配慮するべきだと思った。そしてそのコップを口に運ぼうとした際、
「あ!何やってるの!?ケヴィン!!」
 実典に怒られた。実典はその光景を目撃するとケヴィンからコップを取り上げた後、抱きついてその身を拘束した。そのボウルの水は洗剤入りの水だった。食器の消毒も兼ねて洗剤に浸けておいたものだ。このまま放置しておくとケヴィンが洗剤入りの水を飲んで死んでしまうと思った。いや即座に死にはしないが何度も続けられたら本当に死んでしまうかもしれない。
 ケヴィンは実典に抱きつかれたまま二階に押し込まれた。そしてそのまま実典のベッドに押し倒され実典に抱きしめられたまま動けなくなった。実典はそのまま眠ってしまった。
「うわあああああ!何やってるんだ私!」
 全てを思い出した実典は顔を真っ赤にし、その手で顔を覆い隠した。
「ありがとうごさいます。神様……」
 ケヴィンは実典に聞こえないように呟いた。
「だいたいケヴィンくんもケヴィンくんですよ!何で洗剤入りの水を飲もうとしてるんですか!バカじゃないの!?今度から深夜にリビングに入るの禁止です!」
「は、はい」
 ケヴィンはいつになく強い口調の実典に気圧された。
「もう行きますよ!食事の準備をしないと!」
 実典はそそくさと部屋を出てリビングへ向かってしまった。ケヴィンはそれを見送ると実典の温もりがまだ残る毛布を被った。
「良い匂いだなあ」
 頬を擦り付けて毛布の温もりを堪能した。
「ケヴィンくん、私を本気で怒らせたいのですか?」
 いつの間にか実典が戻り冷ややかな目でケヴィンを見下ろしていた。
「ご、ごめんなさい!!」
 ケヴィンは慌てて乱雑に散らかった実典の布団を整えるとリビングへ向かった。

 

*

「朝から疲れた顔をしているな」
 リビングではエドワードが先にテーブルについていた。新聞を眺めコーヒーを飲んでいる。リビングにはテレビの喧騒だけが響いていた。エドワードは実典を見ると開口一番、そう言った。
「昨日飲み過ぎたみたいです」
「女なんだから飲み過ぎには注意したほうがいい」
 いちいち小癪なことを言うな、と実典は思った。
 ケヴィンもテーブルに着くとテレビのリモコンをいじった。テレビのチャンネルがニュース番組から録画していたアニメ番組に変更される。リビングにはアナウンサーの淡々とした冷たい声からアニメの色相溢れる楽し気な空気に包まれた。
「おい、何をするんだ!勝手にチャンネルを変えるな!戻せ!」
「ニュースなら新聞にも載ってるじゃないですか。ミノリさんすごいですよね!このテレビって!画面の中で絵が動いてるんですよ!絵もすごく綺麗で初めて見たときは感動しました!」
 ケヴィンは感心した様子でテレビに魅入っていた。
「ふん、所詮は子供の遊び道具だ。大人が見るものじゃない」
 エドワードは馬鹿にするように吐き捨てた。その目には苛立ちが宿っている。ケヴィンが来てからずっとこの調子だ。実典はベーコンと目玉焼きを皿に乗せテーブルに置いた。それぞれにトーストしたパンを配りケヴィンの隣に座った。
「ケヴィンくん、私は新聞を読まないのでニュース番組に戻してください。録画したアニメならいつでも見れるでしょう?それに私はアニメは一人で見る主義です」
「はい、わかりました」
 ケヴィンは素直にチャンネルを戻した。
「ふん」
 エドワードはつまらなそうに新聞を眺める。
「そういえばエドワードさん、私が起きてリビングに着くと必ずテレビがついてますよね」
「だから何だ?」
 エドワードは不審げに問い返す。
「いや、どうでもいいことなんですが私が録画したアニメが未視聴のはずなのにみんな再生済みになってるんですよね」
「何が言いたい?」
 エドワードの手がかすかに震えた。
「私が一番に見ようと思ってたんですけどみんな終わりのシーンになっているんです。別に構いませんが少し気になりますよね」
「そいつがやったんじゃないのか」
 エドワードはケヴィンを一瞥し、顎で指した。ケヴィンは不機嫌そうに暗い眼差しでエドワードを見返した。
「ケヴィンくんはほとんど私にべったりなので違う気がするんですよね」
 実典は特別、気にしてない様子で淡々と言った。さもつまらな気に感情のない目でちらりとケヴィンを見た。実典の視線を受け取ったケヴィンは子犬のように首を傾げた。エドワードは寡黙に新聞を見つめているがページを捲る手は完全に止まっている。
「エドワードさん……もしかして私が録画したアニメを…」
「仕事に行ってくる!!」
 エドワードは大きな声で宣言するとジャケットを羽織ってそそくさと家を出てしまった。リビングにはぽかんとした実典とそそくさとテーブルを片付けるケヴィンが残された。
「エドワードさんの仕事って来月からじゃ……」
 実典はそう呟くと立ち上がった。
「どこへ行くんですか?」
「ちょっとコンビニに……」
「僕も行きます!」
 二人は家を出てコンビニに向かった。

 

*

 夕方、エドワードが家に帰りリビングに入るとテーブルにはまだ開封されていない缶ビールとピザが入った箱と取り皿が置かれていた。缶ビールは冷蔵庫から出したばかりなのか水滴が付いている。パーティでもするつもりなのだろうか。まるで自分が帰る時間に合わせたような準備の良さだ。エドワードは不審そうにそれらを見下ろしていた。
「お帰りなさい。エドワードさん」
 テレビに向かって屈んでいた実典はエドワードを見ると笑顔で言った。エドワードの高い身長からは死角に入っていたため少しだけ驚いた。
「これは何だ」
「まあまあ見ててください」
 実典はゲーム機にディスクをセットし電源を入れた。テーブルに着いてチャンネルを弄るとテレビにゲームの画面が映し出され軽快な音楽が流れた。エドワードは状況が飲み込めない。一体この女は何をしようとしているんだ。
「桃鉄大会です!懇親もかねて3人でやりましょう!」
「なんだそれは、子供の遊び道具か?」
 エドワードが馬鹿にするようにテレビを見つめているとぱたぱたと足音が鳴り、ケヴィンがリビングに入ってきた。
「あ!はじまりましたか?」
「これからですよケヴィンくん」
 実典はたった1つのコントローラーを引っ張りエドワードに差し出した。
「桃鉄っていうのはすごろくみたいなものです。ケヴィンくんとエドワードさんは仲が悪いからこれで仲良くなってもらおうと思って。一緒に遊びましょう」
 実典は笑った。エドワードはにこりともせずテーブルにつくと無言でコントローラーを受け取った。
「ふん、馬鹿馬鹿しいな。こんなお子様のお遊びになど付き合ってられん」
 カーソールを操作して自分の名前を入力するとケヴィンにコントローラーを回した。
「言っておくがおれは手加減はできんぞ。泣いても知らんからな」
 そう言ったエドワードの目は人を殺す時と同じ目をしていた。
 ケヴィンが名前の入力を終えると順番決めが始まった。先行はランダムで決まる。カーソールが高速で周りぴたりと止まる。
「先行はエドワードさんですね」
 実典は言った。ケヴィンはコントローラーをエドワードに渡した。
「ふん……」
 エドワードがボタンを押してサイコロを振ると6の目が出た。そして迷いなく黄色いマスに止まる。決断の決め手はただのカンだ。
「黄色のマスはカードを貰えるんですよ。相手を吹っ飛ばしたり自分が飛んだりできるんです」
 実典は極めて適当な説明をした。エドワードの操作する電車は天使に囲まれていた。
「エンジェルカードですね」
「幸先がいいな」
 エドワードはコントローラーを実典に回した。実典がサイコロを振る。良くも悪くもない目だった。
「ケヴィンくんどうぞ」
「よし、がんばるぞ」
 ケヴィンがサイコロを振ると2の目が出た。
「僕もエンジェルを手に入れるぞー」
 意気揚々と黄色いマスに向かったケヴィン。そして彼の電車の周りに一匹の悪魔がふわふわと浮遊する。カードはデビルカードだった。ケヴィンは悪魔に取り憑かれた。ケヴィンはしょんぼりと項垂れた。
「まあまだ最初ですから」
 エドワードはケヴィンの様子を無視してコントローラーを取り早速サイコロを振っていた。再び黄色いマスに止まる。2度目のエンジェルカードを手に入れていた。
「ラッキーですねー」
「当然の結果だ」
 エドワードは顎を上げて自負した。
 その後のエドワードの強運は凄まじかった。その後もエンジェルを手に入れ一人で3体の天使を使役していた。エンジェルは全てミカエルと進化し序盤から安定した収入を手に入れた。エドワードはその軍資金で安い物件を次々と独占し短期の間に巨万の富を築いていた。サイコロの目は全て彼に合わせるかにように目を出し目的地にはいち早く到着した。カードマスにとまれば強力なカードばかりが彼に集まった。金と力と女の全てがエドワードの物となっていた。
 対するケヴィンは同情するほど酷いものだった。カードマスに止まるものの連続してデビルカードを引き、さらにデビルは全員キングデビルへと進化した。1ターンごとに多額の金銭を奪われケヴィンの資産は一瞬にして底をつき多額の負債を負った。サイコロを振っても小さい目しか出ず目的地には一向にたどり着けない上、先には赤マスばかりだった。更に貧乏神に取り憑かれ、何年か経つと貧乏神は巨大化して暴れまわりケヴィンの負債をどんどん膨らませた。
「ヒドイ」
 ケヴィンは小さく呟くと貧乏神に地獄へ連れていかれた自分の電車を泣きそうな目で見つめていた。実典はたかがゲームでこれほどまでに性格が出るものかと同情した。ケヴィンはそれでも必死に地獄から抜け出しなんとか地上に戻った。そして運良く目的地に入りようやく貧乏神の呪縛から解放される。
「や、やった!」
「良かったですね、ケヴィンくん」
 赤字ボーナスで賞金が倍になりケヴィンの財産がギリギリで回復する。実典は可もなく不可もないゲーム進行だったがケヴィンの喜びをみているとこちらまで嬉しくなる気がした。
 ケヴィンが目的地に到着したことで貧乏神はエドワードについた。エドワードは何も言わず画面を見つめるとカードの中からのぞみカードを選択した。のぞみカードの力によって5つのサイコロが現れ、エドワードがそれを振るとほぼ全てが5と6で染まった。
 実典の顔が青くなった。その意味をケヴィンは理解していない。相変わらず浮かれたままでいる。
 エドワードは圧倒的な力を持って迷うことなくケヴィンの電車に向かった。そして巨大化した貧乏神をケヴィンの電車に擦りつけ、自分は遥か先で停車した。
「はああああ!?」
 ケヴィンはテーブルを叩き身を乗り出して画面を見つめた。その後、順番が回るも出目が悪く擦りつけ返すことはできなかった。エドワードは続けてカードを使い巨大な貧乏神に憑かれたケヴィンの電車を最南端へ吹っ飛ばした。ケヴィンは涙目になり、わなわなと震えると立ち上がりテーブルを叩きつけた。
「何すんだよ!この筋肉ハゲ野郎!」
 ついにケヴィンがキレた。
「これが勝負だ。文句をつけられる謂れはない」
 エドワードはケヴィンの顔も見ずに淡々と言う。
「だいたいさっきから何なんだよ!何で俺の電車ばかり散々な目にあってお前だけこんな裕福なんだよ!イカサマしてんじゃないの!!?」
「言いがかりをつけるな。俺は何もしちゃいない」
 ケヴィンは怒りの表情でエドワードを見下しエドワードは威圧感のある目でケヴィンを睨んだ。実典はただおろおろと狼狽してことを見守ることしかできなかった。そしてケヴィンは大人しく座ると静かに言った。
「お前がそう言う風に言うなら僕にも考えがある」
 ケヴィンは実典の隣に座りなおすとその肩に頭を乗せ悲しげな表情で実典にもたれかかった。
「ミノリさん…僕を慰めてください」
 エドワードの目が一気に憎悪で染まった。
「ケヴィンくんそんなことをしても私は協力しませんよ」
 実典は苦笑いでそういいながらもカードの中からサミットカードを使った。全員の電車が1つの場所に集まった。ケヴィンはたった一枚の急行カードを使用してサイコロを増やし周回して貧乏神をエドワードに擦りつけると実典に抱きついた。
「ありがとう!ミノリさん!大好き!」
 ケヴィンは銀色のさらさらとした癖毛をなびかせて頬をミノリの胸に埋めた。実典は満更でも無さそうだ。
 しかしそれはエドワードの怒りを買うのに充分だった。エドワードは憎悪に染まった目で二人を睨みつけていた。その目に宿る嫉妬と殺意を隠すことすらしない。
「いい加減にしろよ貴様。今まで何も言わず見ていたが我慢の限界だ」
「やるのか?筋肉ハゲ野郎、喧嘩なら買うぜ」
 いつの間にかエドワードは巨大な包丁を、ケヴィンは工具を握りしめていた。
「ちょっと!やめて下さい二人とも!たかがゲームごときで!!」
 実典は急いで立ち上がりそう叫んだが二人に実典の声は届かなかった。ケヴィンは身を低くしてエドワードに突っ込み工具を振り上げた。エドワードはその手を掴み包丁をケヴィンの首に突き刺す。血飛沫が上がったがケヴィンは怯むことなく空いた手でエドワードの首を絞めた。信じられないほどの強い力でエドワードの呼吸を圧迫した。思わず包丁から手を放し首にかけられたケヴィンの手を握るが凄まじい力でビクともしない。それでも決死の思いでケヴィンを振り解いた。そして窓を開けるとエドワードは庭に飛び出した。ケヴィンもエドワードを追い獣のように飛びかかった。
 ケヴィンの歯がエドワードの首に食らいつく。肉が噛み切られピンク色の屍肉がむき出しになった。エドワードも負けじとケヴィンの背に包丁を刺し応戦した。そんな二人の殺し合いは1時間にも及んだ。実典は恐怖で引き攣り硬直し窓にもたれかかって見ていることしかできなかった。

 長い殺し合いによって息も絶え絶えになり二人はリビングに戻った。リビングで倒れた二人を確認すると、実典はケヴィンから先に怪我の手当てを始めた。
「ミノリさんありがとうございます。こんな風に優しくしてもらえるならこういうのもたまにはいいかな」
「はぁ?」
 実典はバカにしたような目でケヴィンを見下し吐き捨てるように言った。いつになく強い語気にケヴィンは一瞬硬直する。背筋に冷たいものが走った。
「掃除しろよ」
 ケヴィンの治療をあらかた行うと実典は言った。
「えっ?」
「てめえの血で汚れた部屋を掃除しろってんだよ!役立たずの銀髪クソ野郎!」
 実典はテーブルを蹴り上げた。
「ヒイイイッ!すぐやります」
 掃除を行うケヴィンを確認すると、実典は据えた目でエドワードの元へ寄った。エドワードのえぐれた首筋に消毒薬を塗り雑に包帯を巻いた。治療なんてしたことがないのだから仕方ない。
「なんなの!?いつも真面目なエドワードさんが何やってるんですか!?」
 実典の声は怒りで裏返っていた。
「俺たちは、殺人鬼だ……」
「だから何?」
「この程度で死ぬほど柔ではない……一般人を相手にするわけではないし……」
「は?何なの!?殺人鬼は人に殺されて当然なの!?相手が殺人鬼だから殴ってもいいの!?殺してもいいって言うの!?」
 実典の声は更に裏返った。
「い、いや。そういうわけじゃ……」
 鬼気迫る実典の気迫に押され、エドワードは言葉に詰まった。実典はエドワードの首に巻いた包帯をきつく締めると冷ややかな目でエドワードを見下した。
「す、すまない……俺が悪かった」
 あまりにも冷たい目にエドワードの心は傷ついた。普通に怒られたり殴られたほうがよっぽどマシだ。これ以上怒られるのが嫌でエドワードは素直に謝罪した。実典はため息を一つつくと疲れた表情で寝室へと行ってしまった。傷ついた殺人鬼たちがその場に残された。


 その日から実典家では桃鉄が禁止になった。実典は桃鉄のゲームディスクがしまわれたケースを物置の奥にしまいこみ厳重に封印した。これは実典の過ちだ。もう二度と同じ過ちを行わないように忘れてはいけない。傷ついた二人に関しては、少ない知識で怪我を治療し最低限の手当てを施した。二人とも縫うほどの傷の深さだ。普通の人間ならもう死んでいる。むしろなぜまだ生きているのか不思議だ。込み入った手当はできないし、病院に連れて行くわけにもいかないので取り敢えず傷を消毒し包帯を巻いて様子を見ることにした。結局、二人の仲は良くならなかった。相変わらず他人同士のようにむすっとしている。まるで先住猫と新参猫がいがみ合うかのようだ。実典は内心疲れを感じながら朝食の準備を進めていた。いつになったら心休まる日が来るのだろうか。