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【殺人鬼と三角関係】 第28話 強要される関係

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実典は憔悴していた。一人自室でベッドにこもりひたすら体力を回復させた。昨日の情事が何度も再生された。頭の中が熱をもったように熱くなる。だがいつまでもこうしているわけにはいかない。リビングに降りなければ。ベッドから立ち上がりドアノブに手をかけたところで止まった。

怖い。ケヴィンに会うのが怖かった。嫌いなわけではない。ケヴィンと実典の立場は完全に逆転している。次に会った時何を要求されるのか予想がつかなかった。実典は深呼吸してから扉を開けた。

リビングにはウィリアムとケヴィンとエドワードの3人が揃っていた。まるで実典が来るのを待っていたかのようだった。リビングに入った瞬間一様にこちらを見る。空気が重い。

ケヴィンは実典を一瞥すると歪んだ笑顔を見せた。

「おはよう、実典」

「お、おはよう」

上ずった声で返す。実典は全体を眺めた。ケヴィンとエドワードが向かい合って座っている。エドワードの隣にウィリアムが座っている。空いている席はケヴィンの隣だけだ。実典は座る選択肢を捨て、キッチンに立った。

「なんで立ってるの?座りなよ」

ケヴィンが微笑みかけた。実典は恐怖ですくみ上る。ウィリアムがつかさず立ち上がった。

「ミノリ、ここ空いてるよ」

「なんでわざわざウィリアムが譲るの?」

ウィリアムは言い返せない。実典は渋々とケヴィンの隣に座った。ケヴィンの腕が実典の肩に回されてケヴィンの体に引き寄せられる。ケヴィンに寄り添うような体制になってしまった。まるでエドワードに見せつけるようだった。エドワードは表情を変えないまま無言でケヴィンをにらんだ。

もう嫌だ。いつまでこんな空気が続くのだろう。実典は泣きそうになった。

「そ、そうだ。今日買い物に行くんだけどエドワードついてきてくれる?」

少し間を置いた後、勇気を出して言った。声が震えて掠れてしまう。

「あ、ああ」

エドワードは了承した。

「じゃあ僕も行くよ」

ケヴィンが邪魔をする。エドワードが睨みつけ空気は一触即発だ。

「ケヴィンは勉強が先、オレ教えるから」

ウィリアムがつかさずフォローする。ケヴィンは面白くなさそうにウィリアムを見た。

「勉強なんか後でもいいだろ?」

「実典と結婚したいんでしょ?だったら勉強しなきゃ」

ウィリアムの言葉に悪意はない。ケヴィンは何も言わず黙り込んだ。そして実典の肩から腕を引き解放する。

「行ってくる……」

「早く帰ってきてね」

ケヴィンは微笑んだ。その言葉には脅迫的なものが潜んでいた。心臓を鷲掴みされたような心地だ。

 

実典とエドワードは車に乗り込んだ。エドワードは慣れた手つきで車を運転する。横目でちらりと実典を見た。目にはクマができている。そして首筋にはうっすら赤みのある腫れがいくつもあった。まるで自分に見せつけるような位置だった。

二人はしばし無言だった。話したいことはいくつかあるがタイミングが掴めない。車はあっという間にデパートについた。とにかく駐車場の隅の人目につかない場所に車を停めた。静かな車内にラジオの騒音だけが流れている。BGMは恋の歌だった。微妙な関係に対して気持ちを明らかにしようとする女の歌。意図しない選曲に気まずい空気が流れる。

「エドワード」

実典が口を開いた。重苦しい空気が車内を包んでいた。

「エドワードって結婚してるんだよね」

確認。ここで肯定が帰ってくれば実典の心配事が一つ消える。

「昔はな。だが離縁された。俺がフられたんだ」

エドワードはハンドルに手を置いたまま答えた。

「その人のこと、今でも好き?」

「どうだろうな。昔はそうだったかもしれないがお前と会ってからはほとんど興味がない」

胸を刺すような言葉だった。実典の目に狼狽が混じる。

「子供とかいたの?」

「いたらお前とこうしてないよ」

「そう、でもエドワードは素敵な人だからすぐに再婚できるよ」

「だといいがな」

エドワードは笑う。

「お前が俺と結婚するなら話は早いんだがな」

エドワードはちらりと実典を見た。実典の予想に反してエドワードはぐいぐいと距離を縮めてくる。

「私なんか釣り合わないよ」

実典は心の中で願った。お願いだからその通りだと言ってくれ。距離を離してくれ。

エドワードは実典を一瞥する。そして顔を近づけ接近させた。互いに荒い呼吸がかかる。

「良い加減にしろ。もう知っているんだろ?俺の気持ちを」

「……っ」

実典は目を見開きエドワードの顔を見つめた。

「俺をケヴィンと一緒にするな。煙に巻いてどうにかできるほど俺は馬鹿じゃない。俺をどうにかしようと思ったら一筋縄ではいかないぞ」

実典の心臓がどくどくと高鳴った。

「真剣な話をしようか」

エドワードは言う。実典は精一杯、気丈に振る舞った。

「俺はお前が欲しい」

エドワードの要求。はい、そうですかと気安く返答はできない。

「だ、だって好きな人がいたんでしょ?じゃあ私じゃなくたって」

「じゃあお前がその相手だと言ったら?」

エドワードはニヤリと笑う。

「お前が俺のものになってくれるのか?」

力強い言い方に実典の心が揺らいだ。

「い、いや。でも」

実典は言葉に詰まった。どうしよう。どうすれ良いのだろうか。

「実典、俺を選べ。金には困らせない。お前に世界をくれてやる」

「だめだよ」

実典は上ずった声で弱々しく拒絶する。身体中に残されたケヴィンの残滓が実典の心を縛り付けた。

エドワードの存在は実典にとって魅力的だった。強く逞しくそれでいて気品がある。こんな風に近づかれると胸の高鳴りを抑えきれなかった。だがケヴィンがそれを許さない。ケヴィンは一生涯実典の足枷となり実典の行動を縛るだろう。

実典は困惑していた。そして実典の心の揺らぎをエドワードは見逃さなかった。

「口では拒絶しているが満更でもなさそうだな」

エドワードは笑うと実典の顔を手で固定した。そしてそのまま顔を近づけた。拒絶できなかった。エドワードのキスをそのまま受け入れてしまった。

ガサガサの肌の感触がつたわる。舌が表面をかすめた。そして柔らかく実典の唇を舐める。優しく包み込むようにゆっくりとそれは口の中に入ってきた。エドワードは一度離してから再びキスを交わす。今度はしっかりと舌を絡めた。

「どうだ?ディープキスの味は」

実典は硬直していた。ひどく官能的な味わいだった。体がとろけるような感覚。全身に鳥肌がたった。思わず顔を赤らめてエドワードを見る。

「癖になるだろう?」

「だ、だめです」

首を振った。

「俺はいつも紳士的だったろ?」

「そうだけど……」

「俺のことが嫌いか?」

実典は沈黙した。ここで嫌いといえば引いてくれるだろうか。

「き……きらい」

「本当にか?」

エドワードは眉をひそめて確認する。それが嘘であることはすぐにわかった。実典は目を合わせようとしない。嘘をついている。だとすれば確信ができた。実典の心は俺にあると。

「俺のことが好きなんだな?」

エドワードは問う。実典ははっとしたように目を開いた。必死にエドワードを見ないようにしていた。直視すると本気でその魅力に魅了されるからだ。

エドワードは自分の存在が実典を誘惑していることを感じた。ここまでくればあと一押しだ。エドワードはいびつに笑う。

「俺は実典が好きだ。真剣な交際を始めよう」

実典の耳元でわざと囁く。

「欲しいものはなんでも買ってやる。お前は働かなくて良い。俺が稼いでお前を食わせてやる。俺がお前を守ってやる。ケヴィンからも高橋からも。お前に害なす男は俺がみんな殺してやる」

その言葉は誘惑だった。実典は一瞬でも迷ってしまう。

「お前を愛してる」

とどめのような愛の言葉。実典の目が思わずエドワードを見る。誘惑するような笑み、守ると言った男の信念と強さ。思わず見惚れてしまった。そしてその思いが簡単に受け入れるべきものではないことに気づく。

「やめて、もうやめて。私を惑わさないで。どうして、どうしてこんなことになっちゃうの。選べるわけないじゃない。無理だよ」

実典は悲痛な声で言った。エドワードはただ実典を見つめていた。