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【殺人鬼と三角関係】 第31話 殺してでも奪い取る

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リビングでは実典とケヴィンの二人が沈黙していた。テレビもついていない。二人はただ無言のまま、男の帰りを待っていた。

 時刻は深夜1時。遅すぎる。

エドワードが家を出てから二日、帰ってこない。実典が何度も電話をかけた。だが着信は無情にも繋がらなかった。嫌な予感がする。

車は家に置かれていた。おそらく一度帰ってきてはいるのだろう。だが、エドワードがいない。

実典は焦るように腕を組み、自身の腕を指で叩いた。ウィリアムを失い、傷心した状態でエドワードの身に不安を抱いている。

 

「ケヴィン、エドワードに何をしたの?」

実典は攻める様子も無く問いかけた。ケヴィンは無言で黙り込んでいた。言えるわけが無い。

「……」

その沈黙を、実典は最悪の方向に受け取った。

「実典と寝たときの写真を見せた」

「……」

状況は自分が想像するよりも劣悪だった。実典は頭に手を置き、ため息をついた。いまさらケヴィンを攻めても仕方が無い。ケヴィンをそうさせてしまったのは自分だ。今とにかく対策をとらなければいけない。

「ごめん、最低だよね」

「……いや、私のせいだ」

ケヴィンは思う。もう、実典に選ばれることは無いかもしれない。

「それとこれとは話が別だ」

ケヴィンの心情を察したように実典は言った。そしてそのままエドワードの帰りを待ち続けていた。

 

がたり、庭で物音がした。二人は即座に反応する。カーテンを開けて窓を開けた。

 

周囲を見渡す。周りには誰もいない。

だが暗闇の中、霧を纏うようにそれは現れた。巨大な体を持つ殺人鬼。

「エドワード……」

エドワードは邪悪な霧を纏い、真っ黒な甲冑を身にまとって二人の前に立っていた。漆黒の剣を手に二人の前に立つ。

「明日の夜、あのときの公園に来い」

エドワードは言った。暗く冷たい声だった。

「何言ってるんだよ……」

実典はエドワードに近づいた。エドワードの目が見開き、実典の体を突き飛ばす。尽かさずケヴィンが弾き飛ばされた実典の体を受け止めた。

「何すんだよ!お前」

エドワードは二人を冷たく見下ろしていた。

「俺はお前たちを殺す」

「は……?」

「覚えてるな?殺し合いをした場所だ。あそこで待っている」

エドワードは霧を纏いながら背を向けた。暗闇に飲まれてその姿は消えて言った。

「なんだよ、あれ」

実典がつぶやく。ケヴィンが代わりに応えた。

「悪魔の魔術だ、あいつ悪魔と再契約しやがった」

その声には焦りが含まれていた。

「な、どういうことだよ!!」

実典は思わず問い返す。

「知らないよ、たぶん俺たちを殺す代わりに悪魔の配下に戻ったんだろ!?」

「それって、また殺人鬼に戻るってこと!?止めないと!」

ケヴィンは実典に背を向けた。恐ろしく冷たい目で視線を実典にやる。

「誰が?」

「え」

冷たい声に実典は硬直する。

「俺が止めに行くんだろ?」

「……」

「何で俺がそこまでしなきゃいけないんだよ。あいつのために。絶対いくもんか」

ケヴィンは窓を開けてリビングに戻った。実典もそれを追う。

リビングには冷たい空気が降りていた。実典はちらりとケヴィンを見る。

「ケヴィン」

「何だよ」

あのときから二人の関係は変わっていた。今は従者でも保護者でもない。対等な人間関係だ。だから今、決めるべきなのだろう。問題はそのやり方だ。

エドワードを取り戻すのであれば多少の鮮血は避けられない。もしかしたら誰かが死んでしまうかもしれない。それはケヴィンかもしれないし、自分かも知れない。最悪エドワードが死んでしまうかもしれない。

実典は本当に全てを賭けて、愛する人を殺してでも自分のものにしたいのだろうか。そしてそこまでして手に入れたものは正しいものなのだろうか。

実典は……

 

A:愛する人を殺すのは間違っている。

B:エドワードが死んでもいいから自分の物にしたい。

 

実典は息を付くと答えを決めた。

「私は、エドワードのことが好きだ」

その言葉はケヴィンの胸に深く突き刺さった。

「そう」

辛うじてそう応えたが、その声には動揺があった。

「私はどんな手段を使ってでもエドワードを取り返す。人殺しになんてさせない」

実典は立ち上がる。そして中指の指輪に手を添えた。この指輪には悪魔を退治する力がある。もしかしたら契約も無効にできるかもしれない。現に、悪魔と契約しようとした際も、この指輪が拒絶してできなかった。

「ケヴィンはいいよ。私はケヴィンにそこまで求める資格は無い。ごめんね。ケヴィンの気持ちに応えられなくて」

「……」

ケヴィンは椅子にもたれかかったままそっぽを向いていた。

実典は立ち上がり、リビングを出ようとする。

「僕は」

ケヴィンは口を開く。

「二番目でもいいよ」

その言葉は実典の重圧となった。そんなことを思う男はいない。そんな酷い言葉をケヴィンに言わせて仕舞っている。最悪だ。自分は。

「何言ってんだよ」

実典は言った。

「第二夫人にしてよ。そしたら実典は僕を愛してくれるだろ」

ケヴィンは飄々と言う。

「ふざけるなよ、お前それで納得するのか?」

実典は背を向けたまま問うた。第二夫人、二股。その意味を考える。もしそれを決めるとするなら実典はかなり二人に対して気を使うことになるだろう。

「いいよ、僕は。だから僕を愛してよ」

「……っ」

実典は言葉に詰まった。ケヴィンは実典の返事を待たず話を進める。

「さて、考えようか、エドワードを取り戻す方法。まずは契約しないとね。そうしないと渡り合えないからさ」

実典はケヴィンを見る。その目は本気だった。

「正直言って、僕の力だとエドワードに真正面から遣り合っても無理だ。何か策を立てないと」

実典は視線を泳がせ、口を開いた。

「私がエドワードをひきつけるわ」

実典は言った。

「エドワードの動きは完全に体で覚えてる。あれほど死の記憶を刻まれたんだもの。あらかたの行動はすべて避けられるわ」

「それくらいはしてもらわないとね」

ケヴィンは笑った。

「エドワードは剣で切りつけたあと、剣の血を一度振り払う癖がある。私はわざとあいつの攻撃を食らうわ。肩に一撃もらうくらいなら大丈夫だから。あいつの動きが止まった瞬間、ケヴィンにはエドワードを相手して欲しい。その隙に私がこの指輪で」

実典は中指の指輪を見せ付けた。ケヴィンは首を振る。

「そんなのは危険だ。実典が傷つくなんて僕が耐えられない」

「そんなのは私も同じよ。ケヴィンもエドワードも、二人が傷つくなんて私は耐えられない。二人のためなら一撃食らうなんてなんとも無いわ」

実典とケヴィンは睨みあった。二人とも譲る気はなかった。

「分かった、ただし条件がある」

ケヴィンは冷徹に実典を見る。

「僕と寝ろ」

「……」

「今すぐにできるのは性魔術くらいだ。僕と体液を交換すれば実典の体は強化される。剣の一撃だってかすり傷くらいで済むかもしれない。その後の回復力だって人並みじゃないからな、足の速度だって強化されるから生存率も大幅に上がる」

実典は無言でケヴィンを見ていた。

「それが条件だ。できないなら僕が正面からやりあうけどいいの?」

実典はしばし考えていた。

「ただこの魔術にはリスクもある」

ケヴィンは言葉を続けた。

「妊娠する可能性がある。当たり前だけど」

「……」

実典は今後のことを考えた。エドワードを救い出しても彼からは嫌われるだろう。だが最も最良で安全な方法だ。

「いいわ、やりましょう」

「本気かよ」

その言葉に一番驚いたのはケヴィンだった。

「一度くらいでそれだけの恩恵があるならかまわないわ」

「一度じゃない」

ケヴィンは否定した。

「何度もだ」

沈黙が部屋に下りた。

ケヴィンは立ち上がり、実典の脇を通って出口に向かう。

「やっぱりやめよう」

「……」

実典は立ち去ろうとするケヴィンの腕を掴んだ。

「いや、やるわ」

「エドワードに嫌われるぞ」

「かまわないわ。元々、結婚も交際もするつもりはない。私は一生一人だって構わない。エドワードに好かれようとも思ってないわ。ただしエドワードは救い出す。殺人鬼になんてさせない。どんな手段を使っても救い出す」

実典の目は本気だった。

「妊娠するかもしれないんだぞ」

「一人でも育てるよ」

ケヴィンは背を向けたままぼそりとつぶやいた。

「エドワードの奴……どう思うかな」

部屋に静寂が下りた。間違いなくエドワードは実典を軽蔑するだろう。だが、これは実典の責任だ。だからどんな手段をつかっても彼を助ける。

実典の決心は固かった。性魔術による自己強化を施し、エドワードの注意を引いてギリギリで一撃を食らう。その隙にケヴィンがエドワードを拘束し、指輪の力をすべて使ってエドワードの契約を破棄する。すべての算段が整えられた。実典の判断は成功が保証されていた。運命よりも絶対的な意思の力によって。