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【殺人鬼と三角関係】第33話 愛し合う二人

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ケヴィンは服装を整えた。黒のジャケットにシャツ、黒のズボンというシックな格好だ。さらに黒のローブを羽織り、口にマスクを重ねた。漆黒のマントにケヴィンの金髪が生えて一層美しく見える。だが嬉しくない。ケヴィンにとって最も好かれたい人物にこの美しさは無意味だったから。

 

ケヴィンは振り返った。そして問いかける。

「どう?実典。大丈夫そう?」

実典はぼんやりとケヴィンを見た。そして頷く。

「そう、よかった」

ケヴィンは微笑む。実典は腕を掴み、目を逸らした。なぜだか気まずい雰囲気が流れていた。

昨夜、二人は一線を越えた。濃厚な夜。何度も繰り返される営み。それは確実に実典にとって奇妙な関係を抱かせていた。実典は首を振る。いまさらそんなことを考えていても仕方が無い。今はエドワードを取り返す。殺人鬼になんてさせるものか。実典はこぶしを握った。

 

 

エドワードは公園の中心で立ちすくんでいた。

実典がケヴィンと交わる。その事実はエドワードをひどく苦しめた。嫉妬によって心が支配され、殺意に染まった。エドワードは心の闇に耐え切れなかった。その結果、悪魔の手に落ちたのだ。エドワードには今力がある。だが、まだ発揮されていない。決心がつかなかった。実典が戻ってくる。そのことが頭をよぎると人を殺す気になれなかった。もしかしたら、誰かに止めてもらいたかったのかもしれない…。

今夜、実典とケヴィンが来る。

そしたら、二人を殺そう。そしたら心置きなく、悪魔の僕に戻れるのだから。

「よお、エドワード。来てやったぜ」

背後から挑発するような声が聞こえた。振り返ってみてみると声の主は実典だった。

「遊んでやるよ、来いよ。筋肉ハゲ野朗」

その瞬間、エドワードの頭に血が上った。勢いよく剣を振るう。その瞬間、周囲の風景は公園を囲う木々から廃墟と化した工場に変わった。これがエドワードの持つ能力だ。周囲を自身が所有していた敷地に変え、相手を追い詰める。

「やっぱりそうきたか……」

実典はにやりと笑った。そして踵を返して一目散に逃げ出す。

「逃がすか!!」

エドワードはその後を追った。所詮女の足だ。簡単に追いつけるだろう。そう思っていた。

 

実典はとにかく隙間を走った。エドワードが入れないような壁と壁の間を縫い歩き、相手の意表をついて舞い戻った。この空間は良く知っていた。悪魔とケヴィンの魔術によって何度も見せ付けられたエドワードの所有する敷地だ。彼の手段は良く覚えている。対策はとにかくエドワードの視界をカットすることだ。体の大きなあいつは狭い道に入れない。だから利用しろ。そうすることで生き延びれる。

実典の体は羽のように軽かった。自身を覆う魔力が実典の体力を大幅に上げた。窓の縁を握って飛び込むように侵入し室内を駆けて二階から飛び降りる。着地の衝撃が全くない。完璧だ。あの時は自己強化もないまま逃げ延びていたから正直ギリギリだった。だがこの軽くて早い力を使えば奴を無限にだって振り切れる。

実典はにやりと笑う。計画通りだ。エドワードの戦略も手の内も全て知り尽くしていた。必ず自分が救い出してみせる。実典はもてる力を全て使い走り抜けた。

「殺す!実典!」

背後から怒号が聞こえた。エドワードの声だ。怖いとは思わなかった。今のあいつは夢で見た殺人鬼とは違う。表情の声も違う。殺人鬼のエドワードは冷酷に獲物を狩るハンターのように重圧を持って相手を追い詰める。あいつはおそらくまだ人を殺していない。

実典は一瞬振り返るとそのまま走りきった。そして途中で逆方向に走り、エドワードを困惑させる。

「くそっ」

エドワードは舌打ちした。一人を追うのに時間がかかりすぎていた。自分の体はこれほど鈍っていたのか?自問した。もう面倒だから追いかけるのをやめてしまおうかとも考えた。

エドワードの野暮ったい表情を見て実典は思う。そろそろ頃合だろう。実典はとある場所に向かって走った。そして走り抜けて壁にぶち当たった。

とうとう追い詰めた。エドワードは唇をゆがめて笑う。ここまでくるのにどれほど時間がかかったことか。そしてその剣を振り下ろした。

実典は慎重に剣の軌道を読むと少しだけ軸をずらしてその剣を背中で受け止めた。痛みは無かった。そうだ、急激な痛みはすぐにこない。体から力が出なくなるがそれだけだ。ずるりと力なく落ちる体。エドワードが剣を振り血を振り払う姿を見ていた。

「今だ!やれ!ケヴィン!!」

そして、頭上からケヴィンが飛び降りる。

「……!!」

漆黒のローブを纏い口元を隠したケヴィンが建物から飛び降りた。エドワードの体をケヴィンのメイスが弾き飛ばす。後方に退いたエドワードの体を羽交い締めにして拘束する。エドワードは咄嗟の出来事に対応できなかった。その隙を実典は見逃さない。指に嵌められた指輪に念を込めて、全ての力を解き放った。

「霊力全開!!ぶっ飛ばせ!!!」

声を張り上げ力の限り叫んだ。空間から幾重にも鎖が現れエドワードに襲いかかる。幾重もの鎖がエドワードの両手両足を拘束した。同時にケヴィンがエドワードから距離を取る。そしてギリギリと締め上げた後、エドワードの体を何度も貫いた。幾度もの鎖に貫かれエドワードの体が宙を浮いた。激しい攻撃が終わるとエドワードの体は力なく落ちた。結界を維持できなくなって周囲の景色は人気のない公園に戻っていった。

指輪はボロボロと音を立てて砕けて行った。全ての力を使い果たしたのだ。エドワードの漆黒の装甲が消えていく。そこには普段どおりのエドワードの姿があった。実典は傷ついた肩を引きずりながら恐る恐る近づいた。

「エドワード、エドワード」

外傷はなかった。鎖が貫いた部分は急速に治癒していた。だが、おかしい。エドワードの体が軽くなっている気がする。

実典は暫く呼びかけたのちケヴィンを見上げた。

「大丈夫、契約は切れてる……」

ケヴィンはエドワードの魔力の流れを見た。

「魔力が枯渇してるな……呪いをかけられてるんだ。契約破棄と同時にエドワードの魔力を吸い上げて消失する呪いがかけられてる」

ケヴィンにはエドワードの死などどうでもよかった。淡々と結果を述べる。

実典の目が不安を宿して見開かれた。そして跪いてエドワードを見る。その姿が半透明になった。

「いやあっ!!嫌!!死なないで!!いっちゃだめ!!エドワードエドワード!!」

実典は半狂乱になってエドワードの名を叫んだ。

これ以上大切な人を失うのは嫌だった。

実典は涙を流してエドワードの顔を掴む。そしてその渋い顔を覗き込んだ。

「愛してる」

涙で顔を濡らしながら言った。

「愛してるわ。エドワード」

そしてエドワードに唇を重ねた。エドワードの口の中に舌を入れて唇をスライドさせる。唇を離して息を吸ってから再び唇を重ねた。何度も何度も人工呼吸をするようにキスをした。

「んっ」

泣きながら嗚咽を漏らしキスを続ける。唇が重なり唾液が混じる。繰り返される愛の行為。ケヴィンは耐えられなくなって目を背けた。痛みで胸が締め付けられそうだ。

「エドワード、エドワード」

力無い実典の叫び、実典は諦め切れず何度もキスをした。柔らかい唇がエドワードに被さり小さい舌がエドワードの口を舐めとった。

エドワードはやがてゆっくりと目を開き、実典を見た。そしてその髪に手をやる。

「実典」

実典はエドワードを見ると花が咲いたように笑った。

「エドワード!生きかえったのね!」

そしてそのままエドワードに抱きついた。

エドワードは実典を見る。自分の心の弱さが実典を泣かせてしまった。怪我までさせた。エドワードは嫌悪感でいっぱいになった。

「帰ろう」

エドワードは言う。

「俺たちの家に」

「うん」

実典は頷いた。そして涙を一筋流した。

実典は一旦、エドワードから離れてケヴィンに向き合う。

「帰ろうか」

「あ、ああ」

そして怪我した肩を庇いながらケヴィンの体に抱きついた。

「えっ!!」

急な抱擁にケヴィンの体が猫のように跳ねる。意外だった。

「ありがとうね。エドワードのために命までかけてくれるなんて!ケヴィンは最高にかっこいいよ!」

「そ、そうなのか?ケヴィン」

エドワードは申し訳なさそうに問う。

「違う!違う!命をかけたのは実典だよ!というか怪我は大丈夫なの?」

実典は涙目でケヴィンを見た。そしてケヴィンの顔が一瞬で焦りに染まる。実典は胸にもたれかかったまま硬直していた。

「すごく痛い」

実典の顔はしかめて歯を噛み締めながら言った。実典はケヴィンに抱きついたわけではなく、体を支えるために体を預けただけだった。よく見ると血が止まらない。心配をかけまいと今までずっと我慢していたのだ。ケヴィンは実典の体を両手に抱きかかえると血相を変えて叫んだ。

「エドワード!すぐ帰って治療するぞ!!」

エドワードは頷いた。