HeavyNovel |二次創作小説・Web小説サイト

二次創作小説やWeb小説などを取り扱っています。

二次創作小説やWeb小説などを取り扱っています。

ヒルビリーとレイスの三角関係七日目

f:id:tableturning:20161103151604j:plain

その日、女はトンプソンハウスの客室に引きこもっていた。

ヒルビリーの部屋には行けなかった。昨日のヒルビリーの様子が恐ろしかったのだ。いつもはあんなに優しく穏やかだったヒルビリーが変わってしまった。また顔を合わせたらあの魔物が現れる。そう思うと足が動かなかった。

女がベッドのシーツにくるまりうずくまっていると扉がコンコンと軽い音をたてた。女はびくりと体を震わせる。脳裏に昨日の怪物の姿が浮かんだ。だが扉の向こうから聞こえてきたのは意外な人物の声だった。

「え、えーっと起きてる?僕だよ、レイス。えーっと、そ、そのハニャ……」

「ハニーだよ!ハニー!」

「は……ハニ……」

「だからハニーだって!!」

「は、ハニーーーー!!!」

レイスが大声を出したところで女は耐えかねて扉を開けた。

「あ!あ!本当に出てきた!ヒルビリーがうるさいから恥ずかしいところ見られたじゃん!!」

「レイスがもたついてるからでしょ!?」

ヒルビリーとレイスが言い争っている。変わらない。いつもと同じだ。女はへなへなと跪いた。

「だ、大丈夫?」

ヒルビリーは心配そうに女を見つめた。そして二人に支えられるようにして食卓へと向かった。

 

「もう知ってると思うけど……」

レイスはポツリと言った。

「僕たちは殺人鬼だ」

「人を殺してる」

女は何も言わなかった。ああ、そうか。と虚しい感情だけが胸に渦巻いた。

ヒルビリーをちらりと見るととくに変わった様子はなかった。それが彼女の胸をちくりと刺した。

「軽蔑されて当然だと思う……怖くて当たり前だと思う。君はエンティティの捕食の対象じゃないみたいだし、多分元の世界に戻れると思う。どうする?」

レイスの言葉は冷静だった。だが声は震えていた。目を見ようとすると逸らされてしまった。

「僕たちが、怖い?」

「……」

女はこくりと頷いた。

「そっか」

レイスは顔を背け何もない空間を見つめていた。ヒルビリーの表情に変化はなかった。

「でも、許されるならここにいたいです。たとえ魔物だとしてもあなたたちは優しかったし、元の世界に帰れば殺される」

そう言うとレイスの目に生気が宿った。だが即座にヒルビリーが否定した。

「でも、オレは魔物だから……きみのこと守れないかもしれない」

ヒルビリーの声はひどく落ち着いていた。その言葉に女は泣きそうになる。

「人を殺すとき、オレはオレじゃなくなる。歓喜して楽しんで弄ぶように殺す。帰るとひどく気持ち悪くなる。ものすごく悪酔いするみたいに。頭がガンガンして何もかも壊したくなる。乱暴になる。だから君は、やっぱり帰ったほうがいい」

女は悲しくなった。拒絶されたという理由だけではない。ヒルビリーにとって自分がいなくなるということはそこまで大きい話ではないのだ。自分の存在はヒルビリーにとってそれだけ軽かった。

「……うっ」

自然と女の目から涙が出た。抑えようとしたが止まらなかった。ボロボロとこぼれ、テーブルを汚す。

「ハニー、ご、ごめん」

「ヒルビリーが冷たくするからだ」

ヒルビリーは慌てたように女の元に駆け寄り涙を指で拭った。

「じゃ、じゃあこうしよう。オレが仕事する時は部屋を分けてかかわらないようにする。で普通のときだけ一緒に過ごす。それでどう?」

女は顔を上げる。その目には光が宿っていた。

「よかったー。じゃあこれからはそうしよう!もう泣かないで」

「ヒルビリー……それはちょっと」

ヒルビリーの肩に手を当てレイスがひどく暗い声で呟いた。

ヒルビリーはよく分からないと言った様子でレイスを見上げている。レイスは何かを言いかけようとして、やめた。

今のヒルビリーには理解できるはずがなかった。その時になれば部屋を分けたくらいではどうしようもできなくなる。大人の男女が共に暮らした先の末路。そんなことを言っても分かるわけがないのだ。今の彼は女のことなどなんとも思っていないのだから。