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ヒルビリーとレイスの共同生活十一日目

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ヒルビリーと女は脱衣所の扉の前で立っていた。何かを悩むようにヒルビリーは腕を組む。

「だから普通のことですって」

「そうなのかなー?」

「お風呂に一緒に入るくらいみんなやってますよ。レイスくんも言ってたでしょ?」

女は小一時間ヒルビリーの説得を試みていた。ヒルビリーはどうしたものか考えあぐねていた。男女で風呂に入る。その行為を女は普通だと話すがどうにも違和感があった。言葉にはできない違和感。まるでその行為を超えた先に理性の欠けた飢えのようなものがある気がした。それはヒルビリーの知識というよりも野生的な勘に近かった。

「一緒にお風呂に入りましょうよ。ね?」

女は必死だ。ヒルビリーはようやく折れ、頷いた。

「やったあ」

女は笑った。ヒルビリーはレイスの言葉を思い出した。先日、レイスが訪れた時彼は言ったのだ。

「男女で一緒に風呂に入るとか普通でしょ?ヒルビリーはしらないと思うけどお父さんとお母さんと一緒に風呂に入ったりするよ?日本っていう国だと温泉って言うみんなでお風呂に入る文化もあるんだよ、くそっ行きてえな。行っときゃよかった」

そう、これは普通の行為。特別な意味はない。ヒルビリーは脱衣所の扉を開け、中に進んだ。

 

女の目の前に、強靭なヒルビリーの背中がある。筋肉質で頑強だが引き締まっている。

ヒルビリーのカチャカチャというベルトを外す音が聞こえた。女の胸にざわめきが起こる。心臓がバクバクと鳴った。

「じゃあ、脱がすね」

ヒルビリーは女に向き合いシャツに手をかけゆっくりとめくった。女の肌があらわになる。

「……あの、これ本当に変なことじゃないんだよね?」

「当たり前です!」

そのまま服を脱がせ女は下着だけの状態になった。ヒルビリーは思わず顔を逸らす。

「じゃ、じゃあ後は自分で脱いで。先にお風呂行っててくれるかな」

「はい!」

女は浴室の戸を開け中に入って行った。

女のいない脱衣所でヒルビリーはため息をついた。ボロシャツを脱ぎ、ズボンを脱ぐ。流石に全てを晒すのは慣れていなかったので下半身にはタオルを巻いた。

ヒルビリーは思う。何かが違う。家族風呂とは違う何か。だがヒルビリーが拒絶すれば彼女を傷つけてしまうだろう。ヒルビリーは諦めて浴室に入った。

「ヒルビリーくん」

女はシャワーを浴びたまま振り返る。そしてヒルビリーを座らせると背中を石鹸で流し始めた。

「ヒルビリーくんの背中って大きいね」

「そうかな」

「うん、男らしいというか」

わしゃわしゃと背中を流し、スポンジを胸に移動させて洗う。土の汚れが綺麗に流されていく。そのまま髪に石鹸をつけて泡だてた。ボサボサの髪をもしゃもしゃと洗う。

「筋肉質で細くてかっこいいよ」

そしてシャワーで上から流していく。泡と汚れが落ちてヒルビリーの白い肌が露わになった。

やはり何かが違う。普通の行為ではないように感じていた。胸の中がモヤモヤするような何かが沸いていた。

「ありがと」

ヒルビリーは言った。

「次は私、私を洗って」

「えーー」

女の懇願した目がヒルビリーを見る。ヒルビリーは渋々、女の後ろに移動した。

いやでも女の裸が眼に映る。豊かな乳房、華奢な体。自分とは全く違った女性の体。

スポンジを泡だてて優しく体を流した。あまりにも薄い肌に破れてしまうかと恐ろしくなった。

ヒルビリーのぎこちない手が女の背を撫で、胸に移っていく。女を傷つけないよう優しく包むように撫でていく。女の胸は締め付けられるように苦しくなった。同時に喜びが胸の中で踊った。未来に対する希望を確信した。暖かい湯が体を流し泡が流されていく。至福の時はあっという間だった。

「終わったよ」

ヒルビリーは笑って言った。いつもと変わりない笑顔を女に向けると、立ち上がり湯の中に浸かった。女もそれに続いて湯に浸かる。そしてヒルビリーの胸に寄りかかった。ヒルビリーの膝に乗る格好でヒルビリーに密着する。女の足にヒルビリーのそれを感じた。女は熱っぽい目でヒルビリーを見つめた。

「ヒルビリーくんは彼女とかいないの?」

「いたら君とこんなことしてないよ」

いるか否かという返答よりも「意味がわからない」と言ったような答えのない返答を期待していた。彼女が居ないという事実などとうに分かりきっている。女が知りたかったのはヒルビリーが「彼女」という存在の意味を理解しているかどうかだった。だが返ってきたのは予想に反するものだった。

今女と密着しているこの瞬間、その意味を彼はわかって言ってるのだろうか。

「私の体見ても何も思わない?」

「ちょっとは思うことあるよ」

その言葉に女の胸は撃ち抜かれた。心臓が滝のように鼓動する。もう自身の気持ちを抑えられなかった。女はヒルビリーの肩に手を添えると胸をぴたりと密着させた。

「よく考えたら、お父さんとお母さんは夫婦だもんね、お母さんじゃない女の人と一緒にこんなことするわけない。僕たち夫婦がするようなこと今してるんだよね」

女は体をこするように胸を押し付けた。水面が揺らぎヒルビリーの鼓動が早くなる。血が熱くなるのを感じた。男女の一線が超えるその琴線が目の前にある。

「私、いいよ。ヒルビリーとなら。ヒルビリーになら」

女が何か言いかける前に女の肩が押された。ヒルビリーの手によって女は優しく引き離される。

「止めよう」

ヒルビリーは言う。

「どうして、私を抱きたくないの?」

「ごめん」

「私の体を見ても何も感じない?」

女の声は震えていた。

「ごめん」

ヒルビリーは目を逸らしたまま低い声で答える。

「私のこと、好き?」

「本当に好きな人同士じゃないと、こういうことしちゃいけないと思う」

ヒルビリーの残酷な言葉に女の心は引き裂かれた。ひどく絶望した表情をすると女は湯船から飛び出した。

「あ……」

ヒルビリーが何か言いかける前に、女はバスタオルと着替えを持って行ってしまった。

 

ヒルビリーは服を着替えてからすぐに二階へ向かった。そして女の部屋の前に立ち尽くした。少し躊躇してから扉を叩く。

「こないで!」

扉の奥から声がした。

「寒くない?大丈夫?」

「大丈夫」

扉の奥から聞こえてくる声は涙で淀んでいた。

「ごめんなさい。明日になったらまた元どおりになるから。今は、今は一人にて」

何もいえなかった。彼女を傷つけたのは自分だ。そんな自分がどんな言葉を賭けられるだろう。ヒルビリーは無言で立ち去った。

女の泣き叫ぶ声がわずかに漏れていた。それがヒルビリーの良心を更に掻き立てた。