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ヒルビリーとレイスの三角関係十九日目

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ヒルビリーは地下室の監禁部屋に閉じこもっていた。

「ヒルビリー出てきて!」

女が外から叫ぶ。ヒルビリーは答えない。

「続きをしようよ!」

「イヤだ」

「どうして!?愛してるって言ってくれたじゃない!?」

返答はない。

「私のこと愛してないの……?」

「好きじゃナイ」

「あの言葉は嘘だったの?」

「ソウダ」

女の中で怒りが湧いた。

「デテイケ」

「そうするよ!」

女は大股で歩き始めた。

 

 

四方は壁に囲まれ子供の身長では届かない高い位置に窓があるだけだった。その窓は鉄格子によって塞がれとても出られそうにない。外界とつなぐ鉄の扉はぴったりと閉鎖され風一つ通すそぶりを見せなかった。唯一、扉に空いた小さな穴だけが外との世界を通じている。だがそれは開閉式の穴であり特別何もない今は開かれることがない。

刑務所とみまごうこの場所はヒルビリーがかつて監禁されていた場所だった。

顔の醜さを理由にヒルビリーはこの場所に閉じ込められ両親が腹いせに自分を虐待するとき以外は出されることはなかった。

ヒルビリーはこの場所が嫌いではなかった。自由に対する淡い夢はあれども、少なくともこの閉鎖空間にいる間は両親による陰惨な暴力も引き裂かれるような痛みも心を抉る憎悪の言葉もないのだ。ヒルビリーはいつも恐怖に怯えていた。それでも次は両親からの愛が与えられるのかと期待したこともあったが、それは一度たりともなかった。その希望を全て捨てたときヒルビリーは両親を殺すことを決めた。

骨を捻じ曲げられ足を砕かれこの世の痛みを味わい尽くしたヒルビリーは自らの手で自分を縛り上げていた愛という鎖を断ち切り、両親への期待を捨てた。

両親を甚振り骨の髄まで痛ぶった時、ヒルビリーの中には後悔と虚無感しかなかった。ずっと待ち望んでいた復讐をやっと果たしたのにもかかわらず、彼の心には虚無と悲しみしかなかった。ヒルビリーは心の虚無に争うように家畜を殺した。

チェーンソーを振り回し目に映るもの全てを殺した時、彼は愕然とした。そうやって殺しても殺しても彼の中の悲しみも虚無も消えることはなかった。彼が欲していたのは違うことのない愛だったからだ。

それからヒルビリーは罪滅ぼしのように農場の管理に没頭した。農作物を植えて育て両親が残した農場を守るために尽力した。トンプソン家に残された資料やレシピを辿り彼は一生懸命、理想の牧場主になるべく努力をした。

 

そして今、彼は再び監禁部屋にいる。

この扉の向こうには彼が求めた愛がある。ヒルビリーはただそれに怯え、自ら監禁生活に戻った。

恐ろしたったのだ。愛の先にあるもの、それは艶かしく動物的でヒルビリーの想像を超えていた。他者の吐息がその身にかかり他者の温もりが自分の体を支配する。泥のように体にまとわりつくその感触は未知のものだった。生と死の混在した未知の感覚にヒルビリーは怯えた。

 

女が勢いで玄関までつくとレイスがちょうどきたところだった。レイスは不思議そうに女を見る。

「どうしたの?」

「ヒルビリーがでてこない」

「えっ?」

「地下室の倉庫に閉じこもってるの」

「はぁ?」

レイスにはどうしてそうなったのか見当もつかなかった。

「その、昨日ヒルビリーといい雰囲気になったんだけど急に怖がって」

「何だそれ」

レイスは呆れるように顔を背けた。心底バカバカしいと言った表情だった。

「で?ヒルビリーを出せばいいの?」

「できるの?」

「簡単だよ」

レイスは女を連れて地下の監禁部屋に向かった。扉の前に立ちはだかる。

「ヒルビリー、出てこいよ」

「イヤだ」

レイスは分かりきっていたかのように笑うと女を抱き寄せた。

「きゃ」

「じゃあこの子は俺がもらうよ。今日から僕の部屋で住むんだ。あんなのとやそんなことして楽しむぞー」

暴力的な音と共に扉が開かれた。ひどく恐ろしい顔をしたヒルビリーがレイスを睨みつけていた。

「冗談だって……」

ヒルビリーは無言でレイスから女を奪い取ると自分の腕に抱き寄せた。

「この子はオレのものだ」

「……わかってるよ」

自分の入る隙がないことくらい。とレイスは心の中で付け加えた。

「後は二人で話しなよ」

レイスは踵を返すと帰路についた。誰もいない場所まで歩いて苦いものがこみ上げた。

自分は何をやっているんだろう。わざわざ恋敵を助けるなんてどうかしてる。自嘲気味に笑い涙を飲んだ。