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奴隷の黄昏 第二話

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大柄の男に連れられ少女はドンドルマへとやってきた。田舎とは違う人の多さに唖然とさせられる。建物も少女の住んでいた質素な住宅と違った。鉱物と土を混ぜ合わせた土で地盤がきちんと整備され、頑丈な木材を鉄と鉱石で固定した立派な建築物と簡易的に作られた屋台がいくつも並んでいた。黒人や白人、商人や武器を担いだ人々、多種多様な人々が歩いていた。商人のかけ声や談笑する人々の声が交差しあたりに響く。始めてみる都会の光景。自然と人工物が混在するそれはコンクリートジャングルという言葉が当てはまる。

*

少女は初めて見る都会に驚いているのかきょろきょろと周りを見回していた。大人に比べればまだ短い足で必死に男の後を付いてくる。自分に何の疑いもなくついてくるその姿は生まれたばかりの雛のようだった。

男が少女を放っておけないのには理由がある。彼もまた幼い頃両親に捨てられた過去があった。いやモンスターハンターと呼ばれる狩人の多くは同じような苦い過去を持っていた。泣き続ける少女と自分を重ね無視することができなくなった。しかし少女を助けても男が少女を育てるだけの経済力はない。生活も安定せず命の保証もない借金まみれのハンターに子供を作るなど酷な話だ。いささか無責任のようだが仕方がない。
餓死するよりははるかにマシであるだろうその場所へ連れて行くことにした。生きていればいいこともあるだろう。なるべく前向きに考えることにした。

彼が向かう先は男の花町と呼ばれるハンターズギルド。女が体を売って金を稼ぐのに対して、ギルドに所属するモンスターハンターたちは命を売った。年間で死んでいくハンターは数知れず。一人前になれるのはほんの一握り。故にギルドは多くの戦災孤児を引き取ったり貧しい村で子供を買ったりしながら働き手を確保していた。特に男の子は大変高い値段で引き取られて重宝されていたという。逆に女は簡単に補充できるため花一門より少し高い値段で取引され危険な任務に多く投入された。日向の部分を見ればよく聞こえるが、人さらいや誘拐など残忍な手を使うこともあった。
そんな場所に連れていく、連れて行けば間違いなく死ぬかもしれないそんな場所に。
それでも…暗く湿った場所で腐り果てるよりはマシだった。

男と少女はドンドルマで最も巨大な石造りの建物の中に入る。
建物内部は鎧と武器を装備した物騒な人物が大半を占めていた。
端にはいくつかのカウンターがありそこに受付らしいエプロン姿の女性が佇んでいる。
部屋の中央には縦長のテーブルが配置され、それを囲んで酒を飲みながら談笑する者、酒を運ぶ受付、
その隣にある看板をじっと見つめる者、多くの人々が思い思いの行動をしていた。
酒場のような騒がしく汚らわしく品のない空間、だが閉塞感は無かった。
いや実際には閉鎖された空間だ。借金に縛られ行動を支配される。
いつ死ぬかわからない恐怖に怯えながら、それでもハンターたちはその中にわずかな自由を見出していた。

男に手をひかれ少女はカウンターまで歩く。
「おはよう、あら何?その子」
カウンターの内部にいた若いエプロン姿の女性が言った。
「すまない、可哀そうだったもので…この子のこと頼めないだろうか…」
男が言った。
怪訝な顔をする受付。女など対して役に立たない。鉄砲玉のように捨てられるか邪けんな扱い方しかされない。女の子供が連れてこられることは珍しいことではなかった。だが受付は男の無責任さを攻めた。
「どういうことになるかは分かっている・・・だが放ってはおけない」
「そんなことは関係ないわ。子供が連れてこられたならこちらはそういう処分をするだけよ」
そう語る受付の言葉はひどく冷たかった。機械のような動作で書類を取り出し何かを書き込む。その動作がより一層男の良心を苛んだ。
「いくわよ、こちらに来なさい」
抑揚のない声で受け付けはそういった。
少女ははじめ自分に言われたのか判別することができなかったが男に背を押され渋々歩きだした。何度も振り返りながらカウンターの奥の扉へと入って行く。男は少女の姿が見えなくなるまでそこで見ていた。