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第九話人間と化け物のあいだ

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闇が降りた暗い室内で女の嬌声が静かに響いていた。エヴァンは女をうつぶせにしたまま背後から犯しその甘美な味を楽しんでいた。

より深く二人は密着し、繋がっている。それは深く繋がれた陰部から電気信号のように両者に送られた。

「感じているのか?」

「あ……」

女の吐息が漏れる。目を閉じひたすら快楽を感じ取っている。そんな女の耳をエヴァンが甘く噛んだ。そのまま彼女の首筋や頬を舌で舐める。女は切ない声を上げた。

「安心しろ。すぐに満足させてやる」

エヴァンは女の口に指を這わせる。そのまま指が口の中を混ぜ舌に沿わせた。エヴァンの太い指が口内で熱を伝播させ唾液がエヴァンに指にまとわりつく。エヴァンは指を抜き自身の口に入れ、舐めた。女の唾液をエヴァンが飲み込む。その一連の動作を遠い目で女は見ていた。その様子をエヴァンが見下し、不気味に微笑む。

「愛している」

耳元でエヴァンは何度も囁いた。エヴァンが身じろぎ背後からエヴァンのそれが深く交わる。肉がより深く絡みつき皮膚を滑らせ両者の快楽をより深いものにしていた。ひとつの動作を行うたびに生み出すのは快楽だけだ。まるで脳内を麻痺させるような毒物のようだ。女はエヴァンが与える快楽をひたすら享受し、その意識は何度も白く染まった。もはや何かを考えるということすら難しくなっていた。何度も嬌声を上げ、淫らな声を出す。自分でも何をしているのかわからなかった。

「俺のことが好きだったんだろう?」

「!!?」

思わぬエヴァンの発言に女の意識は一瞬で凍りついた。視線だけでエヴァンを見る。エヴァンは再び太い指を女の口に入れた。舌を指で撫で唾液を絡める。反論すら許されない体勢だった。

「お前は会社でいつも俺を見ていた。遠く離れた場所から俺のことを見ていただろう。俺が気づかないとでも思ったか」

「……」

反論しようとしたが口に指を入れられうめき声しかでなかった。心臓を鷲掴みにされた気分だ。女の目が狼狽して、逃げ道を探る。だがこの男は逃さない。

「俺に惚れていたんだろう?なぜお前から俺のところに来なかった?俺に言い寄られるのを待っていたのか?」

あの日、女は常にエヴァンを見つめていた。エヴァンは高圧的な暴君だった。だが完成された大人の男であるエヴァンは女にとって憧れの対象でもあった。彼に愛され抱かれたらどれほど嬉しいだろう。女の目はそんな感情を抱きながら遠くからエヴァンを追いかけていた。それが全て、見抜かれていた。

屈辱的だ。

「こうして俺に求められてさぞや嬉しいだろうな?俺にここまでさせて満足か?」

エヴァンの指が女の口内をかき回す。舌を乱し歯を撫で唾液を混ぜ合わせた。

「支払ってもらうぞ。俺の労働の分だけな」

エヴァンは女の口内を混ぜ合わせ指を抜いた。再び女の唾液を舐め、体を女に密着させる。そしてひときわきわ激しく腰を動かし始めた。女はその意図を察し、うめき声を上げる。エヴァンの激しい呼吸が耳元から聞こえてくる。何度も何度も往復し息が耳にかかる。限界だった。女は理性を保てずエヴァンの快楽に完全に飲まれた。

「あ……」

呟きとともに女は果てる。その状態の女をエヴァンが責め続ける。果てた後もひたすら快楽を与えられ視界が真っ白になった。ただエヴァンの激しい呼吸だけは聞こえてくる。

エヴァンは女の中に自身の欲望を吐き出した。女の上に体重を預け共に果てる。女の背に重みが伝わった。エヴァンの体温が、体重が、息遣いが体に刻まれた。女の胸の奥が熱く発熱する。体内にエヴァンの精が留められる。

エヴァンは身を起こし、女の髪を撫で微笑んだ。そして女の隣に横たわると腕を差し出した。どうやら腕枕をしてくれるようだった。女はその腕に頭を預けた。意識がゆっくりと正常に戻る。頭はすでにエヴァンの事しか考えられなくなっていた。

エヴァンは笑う。それに釣られ女も笑った。笑うしかなかった。

 

 

時刻は深夜を回っていた。エヴァンは眠りについていたが女は思うように眠れなかった。隣からは穏やかな男の寝息が聞こえる。女はぼんやりとした目で眠るエヴァンの顔を見た。逞しい肉体。強い男の屈強な顔立ち。今隣にいるのはこの男だということを再認識させられた。そして立ち上がりシャワールームへと向かった。太ももを白い液体が伝う。女はそれをぼんやりと見、脱衣所で膝をついた。涙が頬を伝う。

フィリップを裏切ってしまった。あれほど親密な関係を築いたのにも関わらず自分はエヴァンと関係を結んだ。それが酷く女の罪悪感を刺激した。

「泣いているのか?」

エヴァンはいつの間にか背後に立っていた。そして屈み、女の肩を抱く。

「大丈夫だ。俺がすべて解決してやる。その男のことも悪いようにはしない」

エヴァンの言葉は官能的だった。すべてを預け、解決してしまうそんな甘美なささやきだった。

 

 

フィリップは心ここにあらずといった様子だった。整備の仕事では立て続けにミスをした。つまらないミスだ。仕事全体に影響するものではなかったが先輩からは酷く怒られた。すべてはフィリップの恋人に関わることだ。あの日、女は一度も自宅に帰らなかった。なぜだかは分からない。だがフィリップの胸には不安だけが渦巻いていた。

「おい、フィリップ。お客様がご指名だ。点検にまわれ」

「あ、はい」

名前を呼ばれ移動する。指定された車の場所に向かうとそこには一人の男がいた。スーツに身を包んだ屈強な男だった。いかにもエリートといった面持ちだ。

「あの……」

「お前がフィリップか?」

「はい」

フィリップはおずおずと返事をする。そして目の前の車の点検作業に移った。

しかし車の状態はきわめて良好だった。点検など必要としないほどメンテナンスが行き届いていた。

「俺の女が世話になったようだな」

エヴァンは口を開く。フィリップは思わず男を見返した。

「あいつはお前の元に去ることを決心した。もうお前のところには戻らない」

「は?何を言って」

エヴァンはフィリップをにらみつけた。フィリップはおし黙る。

「あいつは正式に俺の女になった。だからお前は諦めろ」

そこでフィリップは状況を察した。こいつは恐らく、女が言っていた「過去の男」だ。

「ふざけるな!何の権利があって僕の彼女に手を出すんだ!」

フィリップの目に憎悪が灯った。

「俺とあいつは寝た。俺には責任がある」

エヴァンは冷酷に語る。

「そんなの……僕だって……」

フィリップは女と過ごした夜を思い返した。あの日、女はフィリップに愛の言葉を囁いたのだ。フィリップと女は間違いなく心が通じ合っていた。それに関して負けることはない。立場は同じはずだ。

「お前は工場の社員に過ぎない。お前では彼女を幸せにはできない」

エヴァンは冷酷な事実を告げる。フィリップはただ目をそらしギリギリと歯を噛み締めてそれを聞いていた。

よく磨かれたエヴァンの車に自身の姿が反射する。薄汚れ見すぼらしい格好をした自分の姿だった。顔色は悪く根暗だ。どうみても目の前に立つ男の方が強く頼り甲斐があった。

「お前は苦しむ必要は無い。俺が女を紹介してやる。あいつよりももっといい女をだ」

エヴァンは言う。フィリップは一瞬だけ沈黙した。

「美しく器量がよく性格のいい女だ。お前と相性もいいだろう。全てを忘れさせてくれるよ。お前はそれで幸せになれ。己を恥じるな」

「……」

言い返す言葉が無い。エヴァンのずるくも大人な態度がフィリップの嫌悪感を誘った。それでも誰一人不幸にならない提案、それを上回るものが彼には見つからなかった。フィリップは敗北していた。

「今日は帰るがまたここにくる。女はその時に紹介してやる」

エヴァンは車に乗り込むと去って行った。

 

それからのフィリップはもはや仕事にならなかった。何度もミスをし、怒鳴られた。心は完全に地を離れていた。どうすればいいかもわからない。

「フィリップ!お前なにやってんだ!!何度ミスすれば気が済むんだ!!」

フィリップは怒鳴られている。だがそんな事実はもうどうでもいい。

「すみま……せん」

「お前本当にやる気があるのか!!?仕事ナメてんのか!?」

「すみま…」

謝りかけたフィリップを何者かが庇う。誰かがフィリップの前に立ち、苦手な先輩を退けた。

「まぁまぁ、そうカッカするな?フィリップはたまたま調子が悪いんだよ」

それは機嫌良く語った。片手を振り先輩を退ける。フィリップとその男、二人だけの空間が出来上がった。彼はフィリップに近づくと顔を寄せた。

「何かあったかのか?俺でよければ話を聞くぞ?なんでも言え。力になる」

フィリップの上司、アザロブ。いつもは怒鳴り散らす苦手な上司だったが今回はその優しい言葉に涙が出た。思わずその場で泣きじゃくるフィリップ。溜まっていたものが決壊した。

「ぼくの……僕の彼女が……」

フィリップは泣きながら全てを説明した。

「ぼくの……ぼくのものなのに……」

泣きじゃくりながら嗚咽を漏らしながら必死に説明するフィリップ。

アザロブは何も言わず話を聞いてくれた。エヴァンがフィリップの彼女を奪い去ったことも、全て。

アザロブは優しく微笑むとフィリップの耳元で囁いた。

「何、簡単なことだ。男を殺し女を奪い取れ。女を犯して子供を孕ませろ。それでお前のものになる。簡単だ」

「そんな」

犯罪だ。と言いかけて嗚咽が先に出た。アザロブの言葉は続く。

「邪魔な男は殺してしまえ。最も簡単な方法だ。女は孕ませればお前の事しか考えられなくなる。何、悪い事じゃない。バレやしないさ。俺が守ってやる」

フィリップの目が見開く。

「教えてやる。やり方を。離れのゲストハウスに監禁室がある。特別にお前に貸してやる」

「……」

「うまくやれよ」

アザロブはニヤリと笑いフィリップの肩をぽんと叩いた。フィリップの胸ポケットにはいつの間にか小瓶が入っていた。アザロブはその場を立ち去る。フィリップはひとりぽつんと立ち尽くす。

 

女を犯す?思わず自分の手を見、震えた。そうだ。取り戻せる。女が自分の子を未籠もれば誰のものにもならなくなる。自分の子を胸に抱き、ずっと自分のものになる。

不可能ではない。道具も環境も揃っている。彼女はフィリップを愛していた。愛し合った女性を孕ませることの何が悪いのだろうか。