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第五話執着と焦燥

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あれから数日が過ぎた。女の固定電話には毎日のようにフィリップからの着信が入っている。女が電話に出られない時は何件も留守電話残していた。びっしりと彼の留守電で埋まっている。女は再生ボタンを押してからそれを聞き届ける。どれも急を要するものではない他愛のない内容だ。

女は鏡に向かい合った。今日もまたフィリップとの逢瀬がある。毎日、毎日、フィリップと会い食事を共にしている。相手は飽きる様子もない。むしろ焦っているようだった。

これが恋人で無くしてなんだというのだろうか。

 

女は駅前に到着するとその場に立ちフィリップを待った。だが来ない。それから何分経っても彼の影は見えない。約束の時間を15分も過ぎている。

「すみません!遅れちゃって」

フィリップはぱたぱたと慌てて走ってきた。

「大丈夫。自分も今来たところだよ」

女は嘘をついた。

「そ、そうなんですか?よかった。服を選ぶのにじかんかかっちゃって」

 「じゃあ、行こうか」

「はい!」

フィリップは女の手を握る。女の顔が僅かに歪む。

いつの間にかフィリップは彼氏面だ。いや自分自身にも問題はあった。フィリップに誤解させるような言動ばかりをとってしまった。彼のことが嫌いなわけではない。しかしこのままではいけない。本当のことを言わなければ。

「今日はどこに行きたいですか?」

「え?あ」

言葉に詰まる。

「どうせなら二人っきりになれるところがいいですよね!やっぱり公園デートがいいかな」

小躍りするようにフィリップは提案する。

「えっと、フィリップくん。ちょっと話があるんだけど」

 「え……何ですか?」

女の焦った様子にフィリップの表情が大きく歪む。まるで別れ話を恐れているような顔だった。

「その、公園に行こうか。そこで話すから」

「はい……」

女のはフィリップを連れて公園に向かった。とぼとぼと元気のない様子でフィリップがついてくる。目の焦点が合っていない。明らかに動揺している。

二人は公園のベンチに座った。朝の公園は静かで人の気配がなかった。

ベンチに座るとフィリップは突っ伏す。

「僕、やっぱりつまらない男ですかね……」

「そんなことないよ」

「だって、あなたを喜ばせてあげられない」

フィリップは額に手を当て俯いた。目元に影が覆う。根暗で自嘲的なフィリップ特有の癖。それは女にとって物珍しくもあり周りにはいないタイプだった。

フィリップは常に自信に欠けていた。それが空回りして彼を焦らせていた。

「その前に確認したいんだけど、君はどう思ってるの?私のこと……」

「え?」

フィリップは思わぬ問いかけに目を丸くした。

「いや、聞いてなかったから」

「す、す……」

フィリップは気持ちを言おうとした。が、なかなか言えなかった。

「僕は……」

フィリップが言い淀んで何分も時間が経った。もごもごと何かを言いかけてはやめる。その繰り返し。

「僕は、僕は……」

「うん、頑張って」

「あなたが、好きです」

「うん」

「あなたの恋人でいたい」

女はじっとフィリップを見つめていた。フィリップは顔が真っ赤だ。まともに女の顔が見れていない。

「わかった。ありがとう」

フィリップは心が凍りつく。断られる気がした。思えば自分は何度も彼女に会っているのに告白の一つもしていなかった。それは自分が臆病で卑怯な男だからだ。きっと嫌われる。そう思った。

「フィリップ、君に言わないといけないことがある」

「な、何ですか?」

フィリップの声が震える。

「実はね二ヶ月前、こういう関係になった人がいたんだ」

「この前言ってた人ですか……」

「うん。正直言うと、肉体関係もあった」

「そんなこと……」

気にしない。と言いかけたが言葉は出なかった。

「それでも、それでも自分でいいの?」

女は少し寂しげな表情で言った。

「当たり前です。僕の気持ちは変わりません」

フィリップは即答する。

「よかった。これからよろしくね。大好きだよフィリップ」

フィリップはぱあっと笑顔になった。