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第十話絶望の外側

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狭いオフィスは穏やかな空気が流れていた。恐らく経営状況の改善が見込めたのだろう。新たな大口顧客を獲得し会社の未来に希望が射した。銀行からの融資も期待できるらしい。その話を聞き女はほっと安堵した。

「おはよう」

「おはようございます」

女は元気よくあいさつする。社長は穏やかに頷いた。

「悪いけど頼まれてくれるかな。この前車検に出した車に見落としが合ってもう一度検査したいんだってさ。工場に車を持って行ってくれないか?」

「工場」

女の言葉が言いよどんだ。だが昔の男が理由で仕事を断るわけには行かなかった。

「分かりました。行ってきます」

「悪いね。頼んだよ」

社長は優しく笑った。この優しさが他人に利用されてしまうのだろうか。女はなんとなくそう思った。

 

女は車を運転し、工場まで訪れた。工場の門の前で停車する。門は開かれていた。

だがおかしい。静か過ぎる。機械音も何も聞こえない。それどころか人がいない。女は車を敷地に入れると車から降り、周囲を見渡した。

 

誰もいない。虫の声の一つもしない。あたりは静寂に包まれている。

 

「……だれかいますか?」

 

女は頼りげの無い足取りで歩く。声をかけるも返答のひとつもなかった。次第に不安になってくる。何か異様な空気が工場を満たしている。

違和感。工場というより廃墟みたいだ。

ふと、背後に人の気配を感じた。よく見知ったものだ。息遣いでわかる。

「フィリップ?」

フィリップが立っていた。こちらを見つめていた。まるで自身の罪を知っているかのように。暗く穏やかすぎる目で。

「こっちだよ。こっちで受付してるからおいで」

フィリップは女の前を歩いた。女もそれについていく。

何もない砂利道を進んだ。その間、会話はなかった。淡々と砂利を踏む音だけが鳴る。

しばらく歩いているとゲストハウスに到着した。木造の一軒家だ。

「中に入って」

「うん」

言われるがまま歩を進める。だが、何かがおかしい。周囲を見渡す。何かが視界をかすめた。積み上げられたスクラップ。その中に一台だけ漆のように黒く光るものがあった。鉄塊に混じった漆の色。あの色には、見覚えがある。

「あれは」

女の目がそこに集中する。

あれは……。

「エヴァン?」

刹那、背後から衝撃が走った。目の前が真っ白になる。思考が停止しその場に崩れ落ちる。

倒れた女の前にフィリップが移動した。そして手に持ったそれを女に見せつけた。

「!!!!!!」

それは女性の頭部だった。引き千切られた女の頭部がフィリップの手にあったのだ。

「これはね。エヴァンの本当の婚約者だ。あいつはお前以外にも女がいた。お前のことなんか愛してなかったんだよ。遊ばれたんだ」

薄れゆく意識の中でフィリップの声が響いた。

その言葉に女は絶望する。結局遊ばれただけだった。胸の奥がひどく痛い。涙を流しながら女は意識を失った。

「大丈夫。これからは僕が守るよ」

倒れた女の体をフィリップは肩に担いだ。そしてそのままログハウスへと運んで行った。